産後うつ サポート活動をする女性の壮絶体験
育児の負担が減ると精神も改善
また長男が5歳ぐらいになると、会話ができるように。自分を無条件に愛してくれているとわかって、辛い経験が薄れていった。「 体が疲れると精神的に不調になるとわかった。気力だけではダメなんだと」。子育てが楽しくなり、家で季節の行事もこまめにできた。 小学校に入ると学童保育も利用した。 「学校は送り迎えもなく、親が体を使って遊んであげることもしなくてよくなったので、体力が温存され精神的に改善しました。そして薬が減りました」。
回復するもまた悪化…離婚を選択
その後、Aさんは順調に回復したわけではなかった。息子が小学校低学年の時に、回復は頭打ちに。薬を増やすのは嫌だったので、仲間と話すほか、カウンセリングに行きだした。「カウンセリングを受け、仲間と話す。保育所に入ったり引っ越したり環境を整える。薬を変える。この3つをバランスよくするとうまくいくんです。カウンセリングを受けて、自分を大事にしたいと思うようになりました」。 ただ、Aさんがサポートグループのために出かけ、ネットを駆使して前向きになると、夫とはすれ違いが生まれた。「ネット界は繊細な人が多いからリアルに話が合う。私はとても元気づけられたんですが、夫は理解できなかったみたいで。夫も仕事をしながら家事を担う毎日で、疲れきっていたのでしょう。口げんかが増えました」。Aさんは少しずつ体調が悪くなって、入院もした。息子が4年生の時に、離婚という選択をした。 Aさんが家を出て、父子の近所に住み、行き来する。 サポートグループの活動をするほか、体調を見ながら派遣の仕事をしてきた。長男の成長に応じて課題もあり、見守っているという。
「周りがわかったら支援や治療につながる」
Aさんに、産後の母親たちへのメッセージを聞いた。 「お母さんは自分を犠牲にして子育てすると思われているけれど、お母さんが元気でないと家庭は成り立たない。まず自分を大事にしたほうがいいです。体がしんどかったら休む。仲間に本音を話して気持ちを共有する。頑張らなくても、ミルクも市販の離乳食もある。産後、お母さんがいかにご機嫌に過ごせるかが大事なんです。今思えば、産後に入院するとか、ファミリーサポートに預けるとかして、とにかく休む時間があったらよかった」。 さらにこう訴える。「周りの人も、産後の母親が休むのをオーケーと思って下さい。産後うつは人間性の問題ではなく、ホルモンバランスの変化で起こる病気です。特に夫が産後のしんどさをわかってたら、違うと思う。夫が『ナーバスになっているようだけど、相談したら』『話を聞くよ』と声をかけて」 産後、渦中にある本人はわからないので、周りがおかしいと気づければ支援や治療につながる。「もう一つ大事なのが、産後うつになっても治るという知識。知っていたら、『産後うつになっちゃったから、休むわ』と言える。それができれば、こじらせて長い時間、苦しむこともないはずです」。 この春、Aさんはつらい気持ちを話しあう会の運営を仲間に任せた。自身の産後から時間がたったこともある。啓発をする講師は続けていく。「最近、産後うつのサポートグループをやりたいという連絡が相次ぎ、アドバイスをしています。全国で草の根の運動が活発になってきて嬉しいです」。