産後うつ サポート活動をする女性の壮絶体験
児童相談所に相談、一度は断られる
そして長男と2人で過ごした日、帰宅した夫に「明日、帰ったらもう私いないかも」と告げた。 Aさんはその少し前に、「もう、死ぬか殺すかだ」と思い詰めて児童相談所に電話していた。「息子をネグレクトして、命の危険があるから保護してほしい」と訴えると、「そういう案件はいっぱいあるので、1ヵ月待ちです」と言われ、ますますこの世は冷たいと思った。 「そんなふうに見えなかった」と驚いた夫は、Aさんが電話したばかりだったが、改めて児相に電話した。緊迫感が伝わり、「すぐ来てください」と言われ、3人で訪ねた。長男の様子もおかしく、急きょ保育園に入れた。朝早くから夜の延長時間まで、夫が送り迎えして最大限に利用した。 保育園を利用し始めて数日間、Aさんはこんこんと寝ていた。産後初めて、休むことができた。「2週間ほど経って、自分もニュースで見るような虐待の事件と紙一重だったと気づきました。辛い思いをしているお母さんはいっぱいいるだろう、仲間同士でリアルな本音を話したいと思いました」。
しんどいと言える会を始める
Aさんは長男が0~1歳の時、自治体の親子サロンに行って、みんながキラキラと楽しそうで打ちのめされた。母親がしんどいと言える会を作りたかった。でもママ友もいないし、当時はSNSもなかった。長男が3歳になる前、地域のセンターにお知らせを貼って仲間を募集。保健師にも声をかけてもらった。登録サークルにし、少しずつ集まるメンバーが増えた。ブログを始め、ネットに情報を出すと遠くから来る人も出てきた。 児童相談所に行った後、夫に病院を変えるよう言われていた。何軒か探してやっといい病院が見つかり、薬を変えたら症状が良くなった。 隣県に産後うつの会があり、そこに行って話してみたのもよかった。「私は産後うつだったんだ、と初めて自覚できました」 。そしてその姉妹サークルとして、産後うつのサポートグループを始めた。 Aさんは、大学の聴講生として心理学も勉強した。上手な病院のかかり方もわかり、症状をうまく伝えられるように。例えば、不眠といっても夜中に起きてしまうのか、寝付きが悪いのか、朝の寝起きが辛いのか。そうしたことがうまく伝えられるとQOL(生活の質)が上がる。