【次期総合戦略】危機感強め人口対策を(12月16日)
福島県の2025(令和7)年度から6年間の地方創生と人口減少対策の実行計画「総合戦略」の策定作業が進んでいる。歯止めがかからない女性や若者の転出超過と、出生数減への対応が最大の焦点となる。従来の取り組みは手詰まり感が否めない現状に危機感を強め、新たな視点を積極的に取り入れてほしい。 次期総合戦略は、現在の県人口174万人が2040年には147万人になるとの推計を受け、「150万人程度の維持」を目標に掲げた。転出超過の解消などで減少幅を縮小するとしているが、若年女性を中心に県外流出が目立ち、実効性のある計画づくりが求められている。 県が公表した骨子案は、基本的に現行の総合戦略を踏襲しつつ、「女性が働きやすい職場づくり」「女性が活躍できる環境づくり」などの項目を新たに加えた。男女の役割分担意識の解消をはじめ、企業での女性活躍推進、男性の育児参画などを強化するとしている。いずれも県内定着を図る上で重要だ。職場での賃金格差の是正や正規雇用の拡大など暮らしに直結する対策も充実させたい。
首都圏などに進学、就職した若者のUターン策も重点施策に位置付けた。県内企業の情報発信を強めるとともに、小中学、高校など発達段階に応じて地元への愛着形成に努めるとしているが、学生時代の奨学金返済の負担軽減策なども検討に値するだろう。若い世代の定着を出生数の回復にどのようにつなげるかも課題になる。 次期総合戦略には、人口減少社会にどう適応するかの視点が盛り込まれる。労働者不足や消費市場の縮小により、地域経済の活力低下が懸念されている。学校や医療水準の維持にも影響を及ぼしかねない。各分野でのデジタル技術の活用など将来への備えを加速させる必要がある。 人口の動きは県内七つの振興局ごとに異なるだけに、詳細な分析に基づくきめ細かな事業が重要になる。県、市町村、企業、学校、住民が一体となって行動する仕組みづくりも欠かせない。県は、具体的な事業を明記した素案を年内に提示し、一般から意見を募る。多くの人に目を通してもらい、県民一人一人が当事者意識を持てる戦略に仕上げたい。(角田守良)