運賃交渉すれば“村八分”にされる? 荷主を過剰に気遣う中小運送の社長たち、本当に守るべきは誰なのか?
接待費1000万円超、従業員の不満
C社長が経営する運送会社で30年以上働いているドライバーのD氏は、最近になってC社長に対して強い不満を感じ始めたという。 この運送会社は、トラックを80台保有する中堅企業だ。物流業界外の人から見ると小さな会社に思えるかもしれないが、トラック保有台数が50台未満の運送会社が全体の93%を占める業界では、準大手にあたる。 D氏は、C社長が毎日のように荷主と接待をしていることを知っていた。荷主は特定の1社で、この運送会社の仕事の9割以上がその取引先に依存していた。 D氏は気さくなC社長を慕っており、C社長が誰よりも早く出勤する姿勢にも尊敬していた。しかし、たまに 「昨夜も呑みに行っててさ……ちょっと今朝はしんどいんだよね」 と弱音を吐くC社長に対して、D氏は「肝臓が弱っているんじゃないですか。接待もほどほどにしてくださいよ」とねぎらったこともあった。 この運送会社も物流の2024年問題の影響を受け、残業ができなくなり、ドライバーの収入も減少した。D氏は運賃の値上げ交渉がうまくいっていないのではないかと感じ、長年勤めているベテラン事務員と雑談していた際に、この疑問を口にしたところ、驚くべき答えが返ってきた。 「実はね……C社長は荷主さんと呑みに行くたびに、『ウチも経営が苦しいんだよ』と逆に説得されて、値上げ交渉を諦めているんだって」 さらに、ベテラン事務員も、相当腹に据えかねていたのだろう。接待費用はいつもC社長が支払っており、その金額が 「年間1000万円」 を超えていると教えてくれた。 「私も、社長の苦労は何となくわかっているつもりでした。だから『接待も仕事なんだな』と思っていましたが……自分は散々飲み食いした揚げ句、逆に荷主に丸め込まれて、私たち従業員のことをないがしろにするなんて……何のための接待なんですかね」 D氏は、このような疑問を筆者のウェブサイトの問い合わせフォームを通じて送ってきた。