「少子化だから、将来年金はもらえない」というのは、本当ですか?
被用者保険の適用拡大に向けた年金制度改正
公的年金制度を社会全体で支える仕組みとして捉える一方で、それぞれの事情で考える必要もあります。少子化により、今後、働く世代が減少するのは既知のことですが、継続的に社会保険料を納付する人材の確保も重要な課題となっています。その解決策の一つが、被用者保険の適用拡大と言えるでしょう。 ■パートなど短時間労働者の社会保険加入 2022年10月以降、段階的にパートなど短時間労働者の社会保険適用が拡大されています。会社員の配偶者の場合、被扶養者(扶養される人)に社会保険料の負担はありません。そのため、年収が扶養の要件である一定の基準を超えないよう働き方を調整するケースも多く見られます。 ただし、これまで社会保険加入の対象外であった方も、これからは就労要件や勤務先の事業規模などによって社会保険の加入対象となるケースがあります。 いわゆる「年収の壁」と呼ばれる基準は、その基準を超えることで社会保険料の負担が発生するもので、結果として手取り収入が減るという逆転現象が起こることもあります。 ただ、それをデメリットと捉えるのではなく、社会保険加入により厚生年金の被保険者となり、将来受け取る年金(老齢厚生年金)を増やす手段であると考えた方が、社会保険制度の主旨に沿っており、自分自身が豊かな老後を過ごせる可能性は高いと言えるでしょう。 厚生労働省年金局の「厚生年金保険・国民年金次号の概況(令和3年度)」によれば、第3号被保険者(会社員の扶養となる配偶者)の数は、減少傾向にあるようです。(※) こうした背景をふまえ、2023年10月からは「年収の壁・支援強化パッケージ」という施策が始まりました。助成金など企業への支援を行うことで、パートやアルバイトで働く人が「年収の壁」を意識せずに働ける環境づくりを後押しするものです。 ■人材の確保や育成など企業努力にも期待 少子化により労働力が減少していくなかで、企業としても、人材の確保・育成や働き方改革、生産性の向上や業務の効率化はますます重要になるでしょう。 雇用の安定化などをふくめた経営基盤が整うことで企業収益が上がれば、賃金上昇も可能となり、結果として、社会保険料収入も増えることになります。働きやすい環境づくりや介護離職などの防止に向けた取り組みなど企業の努力も期待されています。