「サブカルとJ-POP」1960年代編、深夜放送、アングラ、フーテン、全共闘
音楽評論家・田家秀樹が毎月一つのテーマを設定し毎週放送してきた「J-POP LEGEND FORUM」が10年目を迎えた2023年4月、「J-POP LEGEND CAFE」として生まれ変わりリスタート。1カ月1特集という従来のスタイルに捕らわれず自由な特集形式で表舞台だけでなく舞台裏や市井の存在までさまざまな日本の音楽界の伝説的な存在に迫る。 2024年7月の特集は、「サブカルとJ-POP」。802でもやらない夏休み自由研究というテーマのもの、2カ月間に渡ってサブカルと音楽の話を渡り掘り下げていく。 こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND CAFE」マスター・田家秀樹です。今流れているのは中島みゆきさんの時代。1975年に発売になった2枚目のシングル。お聴きいただいているのは2018年に発売になった『中島みゆきライブリクエスト -歌旅・縁会・一会-』このバージョンですね。しみじみしています。時間が経っております。今月の前テーマはこの曲です。 時代 / 中島みゆき 今週はパート2。60年代編ですね。先週は日本が戦争に負けて、そこにアメリカの音楽がドッと入ってきた。それが日本の大衆音楽のサブカル的なその後の新しい流れになっていったのではないか。そんな話でしたけども、今週は日本での出来事、日本の若者たちの新しい流れです。60年代の10年間いろいろなことがありましたね。中でも飛び抜けていた曲から始まります。 帰って来たヨッパライ / ザ・フォーク・クルセダーズ 1967年12月発売、ザ・フォーク・クルセダーズの「帰って来たヨッパライ」。日本のサブカル史の金字塔ですね。この曲がエポックメイキングな曲になりました。何がと言うと、何よりも自由だった。ビートルズに影響された若者たちの遊び心がこんなふうに形になっている。フォークもロックも含めて新しいオリジナルの音楽の扉が開きました。このときのメンバーは北山修さん、加藤和彦さん、はしだのりひこさん。加藤和彦さんに関しては5月に映画『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』が公開されました。そして、7月10日、明後日ですね。京都ロームシアターでトリビュートコンサートが行われます。企画制作がFM COCOLO。奥田民生さん、田島貴男さん、坂本美雨さん、GLIM SPANKY、小原礼さん、高野寛さん、高田漣さん。世代を超えている、次の世代の人たちが加藤さんの曲をトリビュートして継承していこうというコンサートですね。加藤さんは60年代が生んだ最大のサブカル・ヒーローではないか。そんな気もしております。今週は60年代編です。 再会 / 松尾和子 1960年8月発売、松尾和子さんの「再会」。作詞が佐伯孝夫さんで作曲が吉田正さん。吉田正さんは戦後最大のヒットメーカーと言われた大作曲家ですね。ジャズを歌謡曲に取り入れた最大の功労者。そして歌っているのは松尾和子さん。いいでしょう。ジャズ・ヴォーカル、ハスキーボイスの女王。彼女は50年代にジャズでデビューをしたので、先週の続きのような人ではあるんですけども、フランク永井さんとのデュエット曲「東京ナイト・クラブ」というヒット曲もあります。でも、この曲ですよ。松尾和子さんは実は私の最初のアイドルでありまして、中学生のときに机の引き出しにグラビアを入れていておふくろに怒られたという、そんな人だったんですけども。 この歌、歌詞をお聴きになりましたか。「みんなは悪い人だと言うけど私にはいい人だった 小っちゃな青空 監獄の壁を」という歌なんですよ。留置所に入っているんですね。1960年6月に安保闘争というのがありまして、その国会のデモでいろいろな学生が捕まった。この歌はそういう学生が主人公だというふうに当時僕らは思っておりました。そういうふうにも言われましたね。 1960年安保の国会のデモの中で永六輔さん、そしてクレイジー・キャッツが警官隊に囲まれながら「赤とんぼ」を歌った。これは有名な話ですけどね。60年安保は学生、そして安保に反対した人たちの敗北で終わるわけですね。西田佐知子さんの「アカシアの雨がやむとき」という歌がありまして、このまま死んでしまいたい 雨に打たれて死んでしまいたい。あの歌が60年安保の後の若者たちの心情を代弁している歌として知られておりますが、僕は圧倒的にこの「再会」を支持する、なんだそれはですけど(笑)。 60年代、サブカルのキーワードがいくつもあります。深夜放送、アングラ、フーテン、全共闘。深夜放送というのはさっきのフォークルが代表してますね。学生運動というのは60年代いろいろな形で見え隠れするわけで、この「再会」もそんな1曲ですね。1960年、黄金の60年代というふうに言われました、幕開けの曲です。