海自の「空母」いずも、西太平洋にて"いずも飯"で出撃セリ!
海上自衛隊のいずも型護衛艦『いずも』が、グアム米海軍基地から横須賀に向けて出航した。しかし、その海域は「天気、晴朗なれどメシ旨し」である。フォトジャーナリストの柿谷哲也氏がその船路に密着。艦内の意外な様子をレポートする。 * * * 去る6月20日、護衛艦『いずも』が米海軍との共同訓練を実施した。グアムの米海軍基地から出港した。『いずも』は現在、いわゆる「空母化」改修が進められている。まだF-35B戦闘機は搭載されてないが、対潜ヘリSH-60Kは健在だ。取材した柿谷氏はこう言う。 「今回の『いずも』の外観では最後の海外派遣となります。次に我々の前に現れる時は、空母の形になって登場します」 フィリピンを挟んだ西側の南シナ海では、中国とフィリピンの死闘が続いている。中国海軍は空母「山東」を投入。フィリピンを打ちのめして静かにさせようとしているのだ。そして、その東側の西太平洋では空母『いずも』が北上する。 しかし、そこでは静かなる情報作戦・宣撫(せんぶ)が行われる。宣撫とは民衆の人心安定のために行なう援助のこと。つまり、周囲を味方につけるための行為だ。その決め手となるのは"いずも飯"だった。 『いずも』には、東ティモール、シンガポール、ラオス、ツバルなどの太平洋、南シナ海に関係ある諸国の軍人、警察官が搭乗していた。彼らは防衛省・内局が進める次世代士官交流プログラム「シップライダー」によって参加した人々だ。 「対中国に関して、日本だけでは守り切れないことはすでに明確です。そこでアジア・太平洋諸国と一緒に地域の安全を高めていこうと、考えるようになりました。 米軍には懇親プログラムがあり、それを参考にしています。海自の場合、『いずも』『ひゅうが』型の全通甲板を持つ大型艦があります。その大型艦であれば、多くの人が乗れるし、艦内で見せる対象もたくさんあります。 そこで防衛省内局は、『いずも』を洋上のコンベンションセンターとして使う戦術に出たんですよ」(柿谷氏) グアムから横須賀まで移動しながら、東京ビッグサイトでイベントが開催されているようなものだ。 シップライダーは、ただこの艦(ふね)に乗っているだけではない。司令部機能を発揮できる空母『いずも』には、統合作戦時に統合司令部として使われる多目的区画がある。そこがコンベンションホールとして使われ、連日会議が催された。 内容は、IUU(違法・無通告・際限のない漁労)と略称される「不法漁労」がメインテーマとされた。すでに、中国のお得意の武装漁民を先頭に、太平洋の各海域で不法漁労が行なわれている。やがて、その不法漁労から中国海警に代わり、最後には中国海軍が出てきて「ここは中国の海だ」と宣言するのだ。 そこで空母『いずも』は、艦内で果敢なPR戦に打って出た。