36年目シーズンを始動した53歳の三浦知良はなぜ映画「男はつらいよ」シリーズをキャンプ宿舎に持ち込んでいるのか?
今シーズンのJ1リーグが開幕する2月26日に54回目の誕生日を迎えるレジェンド、FW三浦知良が所属する横浜FCの和歌山キャンプ2日目の21日に、オンライン形式の取材に応じた。 横浜FCとともに13年ぶりにJ1の舞台に戻ってきた昨シーズンは、リーグ戦とカップ戦で計6試合に出場。4試合に出場した前者では、後半終了間際からホームのニッパツ三ツ沢球技場のピッチに立った12月19日の最終節で、自らがもつJ1最年長出場記録を53歳9ヵ月23日に更新した。 もっとも先発は一度だけで、4試合のプレー時間も68分にとどまった。神様ジーコが1994シーズンに記録した、41歳3ヵ月12日のJ1最年長ゴール記録を破るどころか、放ったシュートそのものがゼロだった結果に誰よりもカズ本人が満足していない。マリノス戦後に「これがいまの僕の実力。努力するしかない」と募らせた危機感を、新シーズンを始動させたいまも胸中に抱き続けている。 「シーズンが始まるときも、そしてシーズン中もいつもそうですけど、全力を尽くすしかない。練習も試合も、とにかく自分の思いをすべて込めてやっているので、それを今年も毎日、毎回続けていくしかない。今年で54歳になるなかで最年長出場記録や最年長ゴールを期待してくれていると思うので、それに応えられるようにいい準備をして、ひとつでも多く先発で出られるように努力していきたい」 ブラジルでプロになったのが、日本の元号が昭和だった1986年。帰国後は待望のプロ化が訪れた新時代の旗手として平成を駆け抜け、令和を迎えている36年目の現役最年長選手は、チームのシーズン始動へ向けたアプローチを環境、そして練習内容の両方で大きく変えて和歌山入りした。 環境では新型コロナウイルス禍を考慮して、自主トレの場所を恒例のグアムから20年ぶりに沖縄へ変えた。グアムへは年末、年始と二度渡り、同行した他の現役選手が音を上げるほど過酷な3部練習でひたすら心身を追い込んできたが、沖縄での自主トレは今月4日から10日間とした。 地元の協力もあって、J2のFC琉球のホーム、タピック県総ひやごんスタジアムを完全に借り受ける形でメニューを順調に消化。滞在したホテルもカズやトレーナー、調理師らの専属スタッフが泊まったフロアには、他の宿泊客の予約をいっさい入れない配慮を施してくれた。 「コロナ禍で大変な時期に関東、特に東京から来る人間をけっこう懸念するというか、嫌がるところもあったと思うんですけど、そういうことを僕たちにはいっさい感じさせないほど、ホテルの方々が全面的に協力してくれました。おかげでまったく違和感なく、素晴らしいキャンプになりました」