贖罪で移民を受け入れたドイツが直面する苦境 中道を標榜するが、過激なポピュリズムに向かう人も
EUは移民受け入れの政策を打ち出してきましたし、中でもドイツは積極的でした。人道支援の見地から、メルケル首相は「シリア難民を100万人受け入れる」と宣言。内戦で国を追われた人を受け入れたのは、おそらくかつて無辜のユダヤ人を国から追放し、命まで奪った罪を贖う意識もあったからでしょう。 「あれだけのことをしたからには、困っている人たちを受け入れなきゃいけない」 2015年、ドイツが受け入れたシリア難民が100万人の大台に達したと報じられました。
地方議会ではありますが、最近では元シリア難民の政治家も誕生しています。ドイツ語を一生懸命学び、努力し、社会に認められて議員にもなった。これはナチスへの反省とともに、ドイツの柔軟性、寛容性を表しています。 その一方で、戦後の労働人口不足を補うために政策的に受け入れてきたトルコ移民についてもムスリムの彼らはドイツ文化になかなか溶け込めず、長い年月が経っても相互不信が解消することは難しいようです。 ドイツはフランスのような厳しい政教分離ではありませんが、言葉も文化も全く違う人たちとは、どうしても一体化しにくい。サッカーワールドカップでは、トルコ系選手がドイツ代表となり、心ない言葉を投げかけられることもありました。もちろん、これはドイツに限った話ではありません。
山中 俊之 :神戸情報大学院大学 教授、国際教養作家、ファシリテーター