贖罪で移民を受け入れたドイツが直面する苦境 中道を標榜するが、過激なポピュリズムに向かう人も
私の著作権エージェントの元担当者は、10年ほど前、ドイツのメクレンブルク=フォアポンメルン州に住んでいました。移民や外国人が少ないとされる地域だそうですが、それでもネオナチと呼ばれる集団を日常的に見かけていたと言いますから、ベルリンなどの都心ではなおのことでしょう。 「反ナチス」という国の決意や危機感がありつつも、消えない悪の残滓。 ナチスという“過去への贖罪”と、今、移民に仕事が奪われるという“目の前にある危機”の綱引き。この勝負は拮抗関係というより、現実味を帯びているぶん、後者に有利なのかもしれません。「ナチスの悪夢は歴史の授業で学んだけど、すごく昔のことだよね?」と。
旧東ドイツ出身の人の中には、統一ドイツになったにもかかわらず“安い労働力”として使われ、やがて移民に仕事を奪われて失業した鬱屈の中で、ポピュリズムに向かう人たちもいます。 「同じドイツ人なのに不公平だ」という人たちが、右派ポピュリズムと言われる政党「ドイツのための選択肢」を支持することもおおいにあるのです。 もちろん過ちの風化を食い止めようと国も対策を講じており、それが小選挙区比例代表併用の選挙制度。仮に過激な政党が出てきても、議席を得ることは容易ではありません。全体としては中道で多党、そんなドイツの政党を見ていきましょう。
■大連立政権から誕生したメルケル首相 議院内閣制のドイツ連邦議会には、連邦参議院(上院に相当)と連邦議会(下院に相当)があります。 連邦議会は小選挙区比例代表併用制。小選挙区では個人に投票して最多票を集めた候補者が当選。連邦議会の全体の議席数は政党名への投票で決まります。 この際、議席を取れる政党には「小選挙区で3名以上の当選もしくは比例代表で5%以上の票を獲得している」という条件があります。この条件付けによって、ナチスのような過激政党の登場を防ぐとともに、やたらと小さな政党が増えない工夫をしているのです。