「みんなの残業をなくす発明」ソフトバンクのAIサービス・sattoって何ができる?開発・平岡 拓に聞いた
考えずに使える「能動的なAI」をめざす
sattoは、カスタマイズによってより高度な操作を行なうことも可能です。現在は、Googleの各サービスなどと連携できるほか、直接コードを書くことでさまざまなツールと連携させた独自の機能を作成することもできます。 ユーザーが作成した機能は「スキル」とよばれ、それらを集約する「スキルライブラリー」を通してほかのユーザーも利用できる形で公開されます。 AIを使いこなせる人の集合知をスキルとして提供することで、そのほかのユーザーは意識せずともAIを活用できるようになります。 いつもどおりに作業していると、誰かがつくった新しいスキルが画面に現れ、より便利に使えるようになる、といったイメージです。 sattoはユーザーの集合知としてどんどん賢くなり、AIを使いこなせていなかった人に対するソリューションを増やしていきます。 このような集合知による進化を重視する背景には、「技術を使いこなせるかどうかが格差につながるのを避けたい」という平岡さんの願いがあります。 そして、誰もがAIを使えるようにするためには、人間がAIの使い方を探したり選んだりするのではなく、ユーザーは何も考えずに使える「能動性を持ったAI」が不可欠だといいます。 現在のsattoはユーザー自身が使う機能を選んでおり、まだ能動的なAIとはいえません。能動性の最初のステップとして、まずは画面の情報を読み込んだうえで、それを基にスキルが提案されるものを目指します。 最終的にはそういった操作も必要なく、完全に何もしなくても気持ちのいいタイミングで最適なアクションが出てくるソリューションをつくりたいと考えています。
AIは、自分が豊かになるために使うもの
sattoは現在、Mac版のデスクトップアプリが試験提供されている段階ですが、正式ローンチにあたってはクリアすべき目標があるといいます。 sattoのアイデンティティ、つまり、sattoでしかできないことが見つかったときにローンチしたいと思っています。 sattoがないと絶対に困る、業務が回らないといわれるようなアイデンティティを見つけて育てていくことが必要だと考えています。 それに加えて、対応するハードウェア・ソフトウェアを増やしていくことや、能動性を上げていくことも重要だと話す平岡さん。能動性の実現のためには、連携できるサービスを増やすことも不可欠になります。 日本というローカルマーケットでユーザータッチポイントを多く持つソフトバンクの強みを生かし、新たなユースケースを見つけたり、既存サービスとの連携を模索したりしながら人間に考えさせないだけの能動性をもったツールにしていきたいと思っています。 平岡さんが目指すのは効率化そのものではなく、「技術を通して人間の幸福度を上げる」ことだと言います。 AIを使いこなせていない人が、そのことで自分を責めるような状況はよくないと思っています。技術は人間のためにあるので、自分が豊かになるためにAIを使えばいいんです。今の自分が豊かになるためにAIは必要ないと思うなら無理に使う必要はないし、使えない自分を責めることはありません。 もし、AIを積極的に使ってみたいと考えているなら、どうすれば仕事が早く終わるのか、どうすればもっと楽をできるのかといった目的意識をもち、どうすれば明日が豊かになるかを考えながら使うことをおすすめします。 AIを使いこなせる人と、そうではない人の間に格差が生まれない世界をめざす平岡さん。その実現には、価値観の大きな変革が必要になるといいます。 後編では、平岡さんが描く「AIと働き方の未来」についてうかがいます。 平岡 拓(ひらおか たく) 国産ノーコードツールを開発するスタートアップにて最年少事業責任者として複数の事業立ち上げに従事。その後、SNSのインフルエンサー活動と同時に、(株)パンと水とを創業。生成AIとノーコードを組み合わせた業務自動化サービスを開発。現在はソフトバンク株式会社で最年少本部長として、人々が豊かに働くためのAIエージェントsattoを開発中。 「AIとビジネス💡」をもっと読む>> Source: satto, X/Photo: 中山実華
酒井麻里子