抜け穴だらけの政治資金規正法改正の“闇” 改悪の根源は「政治部記者」と「立憲国対」の怠慢さ 古賀茂明
政治資金規正法の改正法が6月19日に成立した。東京都知事選挙の告示直前のタイミングだった。 【写真】かつて剛腕で知られた元自民党の政治家はこちら この改正法の内容については、散々報道されているのでここではあえて触れないが、本来なら、政治資金のあり方を抜本的に見直し、公明正大なものに変革する絶好のチャンスだったのに、それとは真逆で最悪の結末になったと言って良いだろう。 それにしても、「民主主義国家」の日本で、ここまであからさまに国民の声を無視した法案が通るのは、どうしてだろうかという疑問が湧く。 そこで、今回は、政治資金規正法改正の裏で恐ろしい役割を果たした二つの反民主的勢力の話をしてみたい。 まず、マスコミは、今回の規正法「改悪」の主役の一人である。 とりわけ、政治部記者たちの罪は重い。 その原因は、5月14日配信の本コラム日本が今でも報道の自由度70位に低迷する理由 安倍政治で“変えられてしまった”記者たちの末路でも指摘した、彼らの「会社員体質」「記者クラブの談合体質」「取材先の広報マン体質」などに起因する。政治家に擦り寄りネタを仕入れる彼らの取材行動は、自らの価値観が政治家と同質化するという極めて深刻な問題を引き起こす。 今回の改正案についても、「政治は金がかかるが、どうしたらそれを最小限にするかというアプローチと、金がかかることを前提としてどうやって透明化を図るかという二つの道がある」とか、「企業・団体献金の禁止は自民党には受け入れ難いので実現は困難だ」とか、「どこまで与野党が歩み寄れるかが鍵だ」などという報道を繰り返し、理想的な規正法については、最後まで論じようとしなかった。 立憲民主党が、捨て身の覚悟で出してきたほぼ完璧な提案(企業・団体献金禁止、政治資金パーティー禁止、政策活動費禁止)を全面的に支持する論説が皆無だったことがそれを物語る。
■「妥協」を許したマスコミの罪 「とにかく妥協して改正案をまとめることが大事」という相場観を作り、その結果、規正法改正法成立が一つの成果であるかのような錯覚を国民に生じさせたのだ。全く不完全な法律がこの先何年も放置されることを政治部が積極的に後押ししたと言って良いだろう。彼らは民主主義がどうなるかには関心がない。日々の政治家の動きを追い回し、誰と誰が会食して、こんな話をしたらしいというくだらない記事を書いて満足しているだけで、本質的な政策議論を書くことなどないのである。 かくして、規正法改正というテーマは、「一段落した」ことになり、彼らは、次のテーマである、東京都知事選と自民党次期総裁争いの宣伝記事に集中している。 与野党伯仲で「政権交代の可能性も」などと書くのに、自民総裁選関連記事は紙面に溢れるのに、政権交代で次の首相候補となる立憲民主党の代表選についての記事はほぼゼロに近い。恥を知れと言いたくなる。 マスコミの罪についてはこの辺にして、もう一方の主役の話をしよう。それは、野党の国対(国会対策委員会)である。 国対は国会の常任委員会のような組織とは異なり、各党に個別に置かれる組織だ。政権の意向を体する与党国対と野党国対は、国会運営について協議する。中でも、自民と立憲の国対委員長は、緊密に協議しながらスケジュール管理を行っていく。 スケジュール管理と言うと重要性が低いように感じてしまうが、実はそうではない。 一番わかりやすいのが、予算案審議の日程管理だ。今年度予算は、昨年度末の今年3月28日に成立した。予算審議では、予算案がいつ成立するかが重要な与野党攻防のテーマとなる。予算案が3月末までに成立しないと暫定予算が必要になる場合があり、政権の責任問題となる。