谷口彰悟がシント・トロイデン移籍の経緯を語る「ようやくヨーロッパの市場に加わることができる」
それは、この年齢になったから考えられるところでもあり、見えるところでもある。移籍はどのケースも容易ではなく、さまざまな人の思惑や考えが合致しなければ実現しないですからね。それがわかる年齢になったからこそ、なおさらこの年齢で、ヨーロッパでプレーするチャンスを得られたことは大きいと思っています。 だからこそ、周りへの感謝の気持ちを持ちながら、今後もプレーしていきたいと思います。その一方で、ここからは自分との戦いでもある。ヨーロッパの市場に加わったのであれば、その可能性を広げるのも、縮めるのも、自分次第だと思っています」 【ようやくヨーロッパの舞台で戦える】 ── 少し感傷的な質問をすると、念願だったヨーロッパの舞台です。どの時点で、自分が『ヨーロッパに来たこと』を実感したのでしょうか? 「まずは空港に降り立ったときですね。あっ、でも、それ以上に、町並みを見た時のほうが実感はありました。カタールから飛行機に乗って、ブリュッセルの空港に降り立ったのですが、そこからシント・トロイデンへと移動する時に、レンガ造りの家や広がる自然を見て、『ヨーロッパに来たんだな』って思いましたから。その時、『ようやく、この舞台で戦えるんだな』と考えました」 ── シント・トロイデンに在籍している日本人選手たちには、事前にコンタクトを取ったのでしょうか? 「(小川)諒也にはクラブのことや雰囲気も含めて、どんな感じかを聞きました。(伊藤)涼太郎とも日本代表が元日に行なったタイ代表との試合で一緒でしたし、(藤田)ジョエル(チマ)ともE-1(EAFF E-1サッカー選手権)で一緒にプレーしたことがあって不安もなかったので、それほど確認することは多くはなかったと思います」
── シント・トロイデンでは、チームメイトからどんな歓迎があったのでしょうか? 「自分が思っていた以上にリスペクトを示してくれました。年齢的なこともありますが、それ以上に、日本代表に選ばれていることやワールドカップの出場経験があることに、一目置いてくれている雰囲気を感じました。それは日本人選手たちだけでなく、ほかのチームメイト、監督やスタッフからも感じ取りました」 ── それだけ代表に選ばれている実績は大きかったと? 「チームにはやはりベルギー人が多いですが、ワールドカップやナショナルチームに対する憧れや思いが強いことを、僕への対応や反応を見て、より感じましたね」 ── シント・トロイデンでのデビューは8月4日、ホームのシャルルロワ戦でした。70分に3バックの一角として途中出場しました。 「チームの練習に合流して間もなく、コンディションが上がっていないことは自分自身でも実感していました。また、シーズンはすでに開幕しているので、すぐにまた試合が来る。どれくらいコンディションを上げることができるのか。それを計算しながら練習していました。 コンディションを上げるためにやらなければいけない一方で、やりすぎたらやりすぎたで週末のゲームに響いてしまう。そうした葛藤もありながら調整していく難しさがありました。今回の移籍で、そこまで先のことを考えずに、自分の身体に負荷をかけられるプレシーズンの重要性を痛感しました」 ◆第23回・特別インタビュー中編につづく>> 【profile】谷口彰悟(たにぐち・しょうご)1991年7月15日生まれ、熊本県熊本市出身。大津高→筑波大を経て2014年に川崎フロンターレに正式入団。高い守備能力でスタメンを奪取し、4度のリーグ優勝に貢献する。Jリーグベストイレブンにも4度選出。2015年6月のイラク戦で日本代表デビュー。カタールW杯スペイン戦では日本代表選手・最年長31歳139日でW杯初出場を果たす。2023年からカタールのアル・ラーヤンSCでプレーしたのち、2024年7月にベルギーのシント・トロイデンに完全移籍する。ポジション=DF。身長183cm、体重75kg。
text by Harada Daisuke