男子バレー、パリ五輪・イタリア戦の真相。日本代表コーチ伊藤健士が語る激闘「もしも最後、石川が後衛にいれば」
タイムアウトを取る?と聞いたら…。あそこで…
――第3セット24-21とマッチポイントを握った時、ベンチはどんな雰囲気でしたか? 伊藤:24-21、そこからイタリアがサイドアウトを取って24-22になったところは、やっぱり「あと1点じゃん」「いける」という感じはありました。そのあと、石川のスパイクがアウトになって、チャレンジ(ビデオ判定)を要求して、やはりアウトでしたよね。あの後にすぐタイムを取ればよかったなと、今ではすごく思います。そういうたらればは多いですけどね。 ――その24-23になった時、ベンチの中でタイムアウトを取るかどうかのやり取りはあったのですか? 伊藤:タイムアウトを取る?と聞いたら、チャレンジをして間ができたから、タイムアウトみたいなものだろうと、監督がそんな感じで言ったので、取らなかったんですよね。あそこで(タイムを取って)1回水を飲んで、心を落ち着かせてからコートに入っていたら……という思いが今ではあります。(シモーネ・)ジャネッリのサーブもあんなサーブにならなかったかもしれないし。本当にもうあとの祭りですけどね。 ――結果的にそのあと、ジャネッリ選手が石川選手と山本選手の間にノータッチエースを決め24-24の同点に。その後逆転を許しました。 伊藤:本当に、あそこまでは何もかもうまくいっていたというか、非常にマッチアップも良かったし、みんなのパフォーマンスも良く、ディフェンスも良かった。日本チームの強みがすごく出せていたんですけどね……。 ただ石川も、急遽コンディションを上げたというか、合わせてきたので、4、5セット目はちょっと疲労感が出てきていました。ジャンプが少し落ちてきて、スパイクの通過点が下がってしまったので、イタリアのブロックにかかってしまうことが増えてきた。3セット目で終わっていれば、というところですね。 ――3、4、5セット目のデュースの場面で日本は4本の被ブロックがありました。普段ならリバウンドを取って攻め直したり、うまく対応できる力があるのに、そこもオリンピックの難しさなのでしょうか。 伊藤:第3セットの24-24から西田がブロックを食らってしまったところは、24-22から(セットを)取れなかったショックというか、冷静さを失っていたところがあったと思います。西田は大会を通して非常にいいパフォーマンスをずっと出してくれていて、打てば決まるという場面もありましたが、あの時は結構甘いコースで、1枚ブロックだったと思うので、少し動揺がみられたかなと。 それプラス、リバウンドを取るという冷静さを保てないのがオリンピックなのかなと感じます。一番大事な大会で、負けたら終わりの試合ということで、冷静さを欠いてしまったのかなと。リバウンドを取るのも勇気がいるんですけどね。変なリバウンドだったら相手のチャンスボールになってしまう可能性もありますから。それにやはりオリンピックは、世界中の選手がそこに人生を懸けていますから、本当に雰囲気が違う。目の色が変わっている選手が多かったですね。