男子バレー、パリ五輪・イタリア戦の真相。日本代表コーチ伊藤健士が語る激闘「もしも最後、石川が後衛にいれば」
フランス代表ガペのような確固たる自信とテクニックを
――準決勝進出まで“あと1点”という、あそこまで行ったからこそ見えたものがあると思いますが、改めて日本がこの先、あのような場面で最後の1点を取るために、メダルに届くために、必要なものはどういうものだと考えますか? 伊藤:“あと1点”という試合が、ここ数年に何回もあったんです。2022年世界選手権のフランス戦だったり。あれから、あの1点を取り切るために、1点を疎かにしないで今までやってきたつもりだったんですけど、やはり練習の中だけではなかなか養えないんですよね。大きな舞台で、ああいう経験をたくさん積むしかないのかなと思ってしまいます。決勝戦やメダルマッチのような試合をたくさん経験する。なおかつ、今回のような場面でもブレないスキルやメンタリティ。 「絶対これなら1点取れる」というものがあれば。例えば石川のパイプだったり。もしも最後、石川が後衛にいるシチュエーションだったら……2回石川がパイプを打っていれば1本は決まっていたんじゃないかと思ったりもしますし。彼のパイプはスイングスピードも球も非常に速く、セリエAでもパイプは非常に決定力が高いですから。 やっぱり個人の技術力を上げて、さらに強い個を作っていくしかないんじゃないかと思う。とにかく世界トップレベルの技術を身につけること。世界と戦える個の力、揺るぎない技術力を持っていないと、ああいった場面は突破できないと思うんです。少しでもマイナスな考えが脳みそに浮かんでくると、戦えない。 あそこで「俺に上げてきて! 絶対この場面だったらブロックアウト、指先狙って飛ばせるから!」という選手がいれば。五輪連覇したフランス代表のガペ(イアルバン・ヌガペト)みたいに。彼はあれだけのパフォーマンスをオリンピックの決勝で出せる。見ていてもなんか、余裕があったじゃないですか。 ――クルクル回りながら背面スパイクを打ったり、好守備を見せたり、自在にプレーしていましたね。 伊藤:本当にクルクル回って(笑)。イマジネーションがすごかったですよね。(日本と対戦した)VNL決勝の時なんて、サングラスかけてスタンドにいたんですよ(笑)。その選手がパリ五輪でMVPになっちゃうんだから。確固たる自信、揺るぎないメンタリティがあるんでしょうね。それに追いついているテクニックもあるし。だから、例えば日本のイタリア戦第3セット24-23からの場面で、石川に「絶対に返せる」というパス(サーブレシーブ)の自信があれば、パスをしてから打ちにいっていたんじゃないかなとも思いますし。