北ミサイル、狙われた楽園グアム「準州」の悲哀
軍事拠点としてのグアム
第二次大戦後、グアムは米軍の軍事拠点としての重要性を次第に大きくしてきた。ベトナム戦争の際、グアムはB52爆撃機の発進拠点だった。軍事拠点化が進み3000メートル以上の滑走路があるアンダーセン空軍基地や、潜水艦の基地となっているほか、空母の接岸も可能である。さらに米軍はここ20年近く、再編に世界的規模で取り組んでおり、アジア・太平洋地域で発生する有事やテロ対策、自然災害に速やかに展開する上で、グアムの位置は戦略的にますます重要になっている。 グアムの軍事拠点化は、米軍基地が領土の何と3分の1を占めているという事実をみれば明らかであろう。ハワイの面積の中の米軍基地は6%程度、在日米軍が面積の約10%である沖縄と比較しても、グアムの数字が際立っている。 同盟国であったとしても外国の軍が駐留する沖縄の場合、地元の人々の様々な負担の上に基地運営が成り立っている。グアムにも基地反対運動があるが、沖縄に比べると自国である分だけ摩擦は目立ってはいない(自国である分、抑え込まざるを得ないといえるのかもしれない)。 アジア太平洋地域に展開する米軍は約10万人であり、その4分の1に当たる約2万5000人が沖縄に集中している。沖縄の中で最大の兵力が海兵隊だが、日米両政府は2005、06年に合意した米軍再編で、沖縄の海兵隊を半減させ、グアムへ移すことを決めている(グアムにも移転についての反対運動があることも記しておきたい)。
州になれない「準州」
では、そんなに重要なグアムがなぜ、州(state)でなく、米領(US territory、準州)でしかないのか。一言で言えば、あまりにも小さいほか、アメリカ合衆国の一員としての歴史も長くないということが理由であろう。 アメリカの準州には、グアムのほか、プエルトリコ、米領バージン諸島、北マリアナ諸島、アメリカ領サモアがある。グアムの人口は前述のように16万で、50州の中で最も人口が少ないワイオミング州が約58万人、その次に少ないバーモント州が62万人であることからも、その差は大きい。他の準州の米領バージン諸島は12万、北マリアナ諸島は8万、アメリカ領サモアは7万とグアムよりも小さい。 準州の中で人口が多いのはプエルトルコで、人口は350万人を超えており、50州と準州を合わせた中で29番目に位置する。しかし、アメリカ領となったのは、グアムと同じ年19世紀末であるため、やはり歴史的な経緯も大きいとみられる。 そもそも1790年に作られた首都ワシントン(ワシントン特別区)は人口68万人でワイオミング州やバーモント州よりも大きいが、準州と同じ扱いとなっている。ワシントンでは州昇格運動が盛んだが、なかなか実現しない。 州昇格には連邦議会での承認が必要である。アラスカ(1868年アメリカ編入、人口約71万人)とハワイは長く激しい州昇格運動の後、1959年に準州から州に昇格した。ハワイの場合、ホノルル国際空港(ダニエル・イノウエ・ホノルル国際空港)にその名前が記されている故ダニエル・イノウエ氏(後の上院議員)らが熱心に州昇格運動の闘士として活動したことで知られている。 これ以後、51番目の州が登場していない。