最終局面の中学受験「気高き12歳に満開の桜を!」 無鉄砲な突撃は危険! “終了組”からのアドバイスとは?
ちなみに、『母たちの中学受験』には、2022年の拙著『勇者たちの中学受験』(大和書房)のアユタ、ハヤト、コズエのその後(現在中学3年生)も描かれています。 ハヤトの母は「決まった学校がいちばんいい学校。中学受験は通過点でしかありません。いろいろ考えちゃうのは受験後の数週間から数カ月だけだから大丈夫です!」と、元気いっぱいのエールを送ってくれました。 コズエの母は次のような言葉を寄せてくれました。
「どんなに心配でも、親が代わりに受験するわけにはいきません。親にできることは、勉強を教えることでも子どもを管理することでもなく、子どもを信じてただ応援することだけだと痛感しました。 第一志望に合格するのは3割程度といわれる中学受験の世界で、わが家も含め大半のまだ12歳の受験生が涙を流すのも事実です。どんなに涙を流しても、翌日そしてまたその翌日にも試験があります。親がどれだけ励ましても、最終的に立ち上がるには本人の気力が必要です。
どうか受験生本人だけではなくご家族全員が心も体も健康に入試本番を迎えられるようにしてほしいと思います。そうすれば、最後はきっとご家族で笑えているはずです」 書籍や雑誌やネットから、効果的な学習法やおすすめの問題集、塾や志望校選びのポイントなどの情報を得る活動は思う存分やってください。これらはいわばオフェンスです。一方で、第一志望合格以外にも、中学受験にはさまざまな成功の形があることに気づけば、中学受験に失敗などないとわかります。もう怖れるものはなくなります。鉄壁のディフェンスの完成です。そうすれば、攻守の調和のとれた無理のない中学受験が可能になります。
■子どもにとっての「サクラサク」 模試の結果に一喜一憂したり、なかなかやる気を出さない子どもにイライラしたりしてしまうときには、子どもの横顔を眺めてみてください。 自ら塾に行きたいと言い出したって、あの学校に行きたいから頑張るんだなんて言っていたって、結局のところ12歳の子どもが勉強する最大のモチベーションはほとんどの場合、親の笑顔が見たいからです。それなのに親御さんを笑顔にするほどの成績がとれなくていちばんふがいない思いをしているのは本人なんです。そんな気持ちを秘めながら、必死に自分と戦っている気高い12歳の横顔に、愛おしさと尊敬の念が湧いてくるはずです。
逆にいえば、どんな結果であれ最後に親御さんが心から笑顔になってくれれば、それが子どもにとっての「サクラサク」です。それまでの努力のすべてが報われた気になれます。望んだとおりの結果が出たから笑顔になるのではありません。自分にとって大切なひとたちが笑顔になってくれているから、どんな結果にも誇りがもてるのです。 それが18歳や15歳の受験とは違う、12歳の受験です。
おおたとしまさ :教育ジャーナリスト