幼い頃、家族から受けたダメージが“第4の発達障害”を引き起こす。幼少期トラウマのチェックリスト
幼い頃に親から受けた心の傷や性被害などが、大人になってから強烈な心身の不調を引き起こすことがある。その症状は発達障害によく似ているが、実はトラウマによる「複雑性PTSD」の可能性がある――そう指摘するのは、『トラウマからの回復』の著者、精神科医・生野信弘氏だ。「第4の発達障害」とも呼ばれる、複雑性PTSDから回復する道を探った。
家族が子どもの脳や神経にダメージを与えて発症する
発達障害はADHD(注意欠如、多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、LD(学習障害)の3つに大きく分類され、病気ではなく生来の特性とされている。 だが近年、後天的なトリガーに誘発され、発達障害と酷似した症状を起こすトラウマ関連疾患が認知され「第4の発達障害」として注目を集めている。幼少期に受けたトラウマが、後に発達障害とそっくりの症状を引き起こすというものだ。トラウマに詳しい公認心理師の三木一太朗氏はこう話す。 「虐待は言わずもがな、機能不全家族や面前DV、心理的ネグレクトなども子どものトラウマとなり、脳や神経系にダメージを与えます。そうした幼少期の傷が大人になって第4の発達障害として表出する可能性があるのです」
幼少期にトラウマを抱えた人に生じる問題
「第4の発達障害」は従来の発達障害とは異なる。しかし、その症状はあまりに酷似しているという。 「幼少期にトラウマを抱えた人は自律神経の失調などさまざまな要因からうつや過緊張、仕事でうまくパフォーマンスを発揮できないといった症状が見られる人もいます。また、不意にトラウマが蘇り、再体験する『フラッシュバック』が起きるのも特徴。 さらに、幼少期に養育者との愛着形成がうまくいかなかったことで、自我の形成が不安定となり、自分の感情や意見がわからない、伝えられないという心理的な問題も生じます」
第4の発達障害が引き起こされるワケ
こうした症状がきっかけで社会不適応を起こす可能性も高くなり、それが発達障害と勘違いされる要因にもなっているという。 それにしても、なぜトラウマと発達障害は似ているのか。 「発達障害は遺伝や胎内で受けた環境要因によるストレスで発達が阻害されるのに対し、発達性トラウマ障害は不適切な養育や虐待などのストレスによって発達に支障を来します。根底にある要因は異なれど、どちらもストレスによって神経系の発達が遅れる・阻害されるという点が共通するためと考えられます」 そのため、トラウマによるメンタル疾患は発達障害と診断されてしまうケースも多く、「根本的解決に繋がらない」と三木氏は危惧する。 下は幼少期に受けたトラウマを理解するためのチェックリストだ。生きづらさを感じたら、まず自身のトラウマを疑ってみるのもいいだろう。