バイデン大統領に生活費高騰の呪縛、有権者に好景気や株高は二の次
しかし、コアインフレに対する怒りは、問題の核心に迫っている。誰もが同じものを買うわけではなく、食料品やエネルギーなど生活必需品は、低所得者層ほど家計に占める割合が大きい。多くの人にとって状況がこれほど悪く見える理由はここにありそうだ。
ストラテガス・リサーチ・パートナーズのジェイソン・デセナ・トレンナート氏は、食料品やエネルギー、住居、衣料品、光熱費、保険など、人々が定期的に購入しなければならない品目からなる庶民インフレ指数を作成した。裁量的なものは含まれていない。4月の庶民の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.8%上昇となり、9カ月連続で総合CPIを上回った。庶民CPIはバイデン政権下の40カ月のうち34カ月で総合インフレ率を上回った。トレンナート氏は「選挙の争点として、バイデン大統領が有権者の認識を覆すには時間切れかもしれない」と語る。
もうひとつの指標は「アンチコア」と呼ばれるもので、エネルギーと食料のみを含む指数だ。この指標は何十年も安定していたが、2021年に突然急上昇した。ブルームバーグのキャロリン・シルバーマン、ジョナサン・レビン両氏が、食料とエネルギーの相対的な加重を用いて計算したところ、このアンチコア指数は2012年から20年までの8年間で5%未満しか上昇しておらず、年率では約0.6%上昇にとどまった。バイデン政権下に入ってからはさらに26%上昇した。この上昇基調は22年の夏には終わり、アンチコアのインフレはわずかながらマイナスに転じたが、価格は21年よりもまだ25%余り高い。
加重ベースで1959年までさかのぼれるアンチコア指数はない。少なくとも経験則にはなると考え、食品とエネルギーの指数を直接足し合わせた粗い指標を作成したら、2022年のアンチコア指数は1970年代初頭よりも高いことが分かった。これより高いのは1980年だけだった。
アンチコア指数は現在、わずかなデフレ、あるいは完全な物価下落へと移行している。歴史的に見ても、食品価格が下落することはほとんどなく、これは異例だ。過去にインフレに見舞われた際、人々はそのような物価上昇の波を乗り越えてきたため、このことを知っていた。だが、今回は違った。1980年代半ばから物価上昇率は緩やかになり、世界金融危機後の10年間はかなり低かった。消費者は必需品の価格が非常に緩慢にしか上昇しないことに慣れており、これらの価格が下がらないという記憶もない。バイデン政権の食品インフレ率は6.5%で、ニクソン政権に次ぐ2位だ。