バイデン大統領に生活費高騰の呪縛、有権者に好景気や株高は二の次
しかし、二極化だけではこれを説明できない。分断の核心は経済にあり、それが人々の幸福感に残酷なワンツーパンチを食らわせた。数十年にわたり悪化かつ深刻化してきた格差に、パンデミック後のインフレショックが加わった。その結果、生活必需品コストは短期的なスパンではここ数十年で最大の上昇に見舞われた。そのため、経済全体はまずまずの状態であるにもかかわらず、すでに取り残されていた多くの人々の生活はさらに悪化した。
インフレ指標は歪曲(わいきょく)されやすく、広く誤解されている。インフレ率と物価水準の違いを考えてみよう。前年比のインフレ率が経済の大部分で正常値に戻ったというのは詭弁(きべん)ではない。紛れもなく事実だ。しかし、だからといって物価が以前の水準に下がったわけではない。卵の価格は、バイデン政権の最初の2年間に2倍になった。その後、卵の価格は下がったが、それでも2021年の初めと比べて44%も高い。インフレ率が低下していると主張するのは真実ではないとの声が多いが、真実味を欠いているとは言えないだろう。物価はバイデン大統領の就任時よりもはるかに高いままだからだ。インフレ率は変化率で表されるが、私たちの多くにとってより重要なのは、現在進行形で物価水準が上昇していることだ。
食品とエネルギーを除いたコアインフレという概念は、さらに大きな怒りを生んでいる。食品とエネルギーの価格が重要であることを否定するものだと広く批判されている。そのような考えは全くのでたらめだ。食品とエネルギーは変動しやすく、金融政策の手の届かないところにあるため、除外されている。中央銀行は政策の効果を測るためにコアインフレ率を知る必要がある。
コアインフレが総合価格の数字を下げる手段だというのも間違いだ。現在、食品とエネルギーの価格は下落傾向にある。従って、コアインフレは総合の数字よりも高い。これらの価格を除外する賢明なエコノミストへの怒りはまったく見当違いだ。