「こんがり焼けたトーストは体に悪い」は本当か…老化を進める"糖化"を無理せず避ける画期的な方法
■体内で作られるAGEsこそ要注意 メイラード反応は、食品だけでなく、私たちの体内でも発生します。その代表的なものの一つが、糖尿病の指標であるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)です。 これは酸素を運ぶたんぱく質であるヘモグロビンが、血液中のブドウ糖(血糖)と反応して糖化したもの(糖化ヘモグロビン)です。糖の量が多いと糖化反応は起こりやすいため、ヘモグロビンに占めるHbA1cの割合が高いほど、高血糖状態が長く続いていることを意味します。糖尿病によって高血糖状態が続くと、血管の糖化により、動脈硬化が進行すると考えられるのです。そのほか体内の糖化の原因には、ストレスや喫煙、睡眠不足などがあり、AGEsを増大させる要因だと考えられています。 糖尿病の予防には、食事中のAGEsを気にするよりも、運動とバランスのよい食事による過体重の予防、飲み物や間食での糖質の過剰摂取を控えることが大事です。またストレスをためないためにも、十分な睡眠と休養もこころがける必要があります。 ■食事は「量」と「バランス」が大事 確かにAGEsは、体内において老化の原因物質の一つとして問題になります。でも、食品に含まれているAGEsが同じような悪さをするとは限りません。体にとって必要な成分でも、とり過ぎれば「肥満」や「糖尿病」の原因となって健康を害すこともありますし、有害な成分であっても量が少なければ問題にならないことも多くあります。 つまり、大事なのは食事の「量」や「バランス」なのです。 そもそも、私たちが日常的に口にしている食品のほとんどには、「体によい成分」も「体に悪い成分」もどちらも含まれています。食品に含まれる成分の健康への影響は「量」に依存します。さまざまな食品をバランスよく食べることが健康によいとされるのは、有害な成分の摂取量が多くならないようにするという、じつはリスクマネジメント策でもあるのです。 ですから、あまりAGEsのことを心配しなくても大丈夫。揚げ物や焼き菓子などの摂取量が多くなりすぎないよう気をつけながら、バランスのよい食生活を送るようにしましょう。 〈参考文献・資料〉 R.C., Borrelli. V., Fogliano. Bread crust melanoidins as potential prebiotic ingredients. Mol Nutr Food Res. 2005 Jul;49(7):673-8. Monien, B.H., et al.acrylamide (hemoglobin adducts, urinary mercapturic acids) and new insights on its endogenous formation. Arch Toxicol 98, 2889–2905 (2024). 食品安全委員会「食品安全委員会の20年を振り返る 第5回 アクリルアミドともやし炒め~リスク評価のその後は?」 農林水産省「食品中のアクリルアミドの含有実態調査」 ---------- 成田 崇信(なりた・たかのぶ) 管理栄養士、健康科学修士 管理栄養士、健康科学修士。病院、短期大学などを経て、現在は社会福祉法人に勤務。主にインターネット上で「食と健康」に関する啓蒙活動を行っている。猫派。著書に『新装版管理栄養士パパの親子の食育BOOK』(内外出版社)、共著書に、『薬局栄養指導Q&A』(金芳堂)、『謎解き超科学』(彩図社)、監修書に『子どもと野菜をなかよしにする図鑑 すごいぞ! やさいーズ』(オレンジページ)がある。 ----------
管理栄養士、健康科学修士 成田 崇信