西村誠司社長(『にしたんクリニック』『イモトのWiFi』)「あえて″成金豪邸″を建てた深いワケ」
総工費30億円! 個人資産300億の剛腕実業家が抱く野望とは――
特注のロールス・ロイス、南米から輸入した4000万円の樹木、インフィニティプールと4000万円の黄金の滑り台……まるでハリウッドセレブが住んでいるかのような大豪邸である。家主は、いま日本で最も勢いのある有名実業家だ。 4000万円のパラボラッチョ、滝や露天風呂に本格ジムも…西村社長の豪邸内部を公開! 「成金社長の豪邸自慢って、『ああ、やっぱりね』って一番わかりやすいじゃないですか。悪いことしてお金を儲(もう)けて、そんな社長はゴールドが好き……というステレオタイプな絵。その絵にガチっとハマるような家にしてみたんですよ(笑)」 そう語るのは、『にしたんクリニック』や『イモトのWiFi』などを運営するエクスコムグローバル株式会社社長の西村誠司氏(54)である。西村氏は、今年8月に都内の高級住宅街に4階建ての豪邸を建設。その豪華絢爛な邸宅はいまメディアの注目の的となっている。 「総工費は約30億円で、一坪あたり1200万円くらいだったかな」 玄関前にはアルゼンチンから輸入した一本4000万円のパラボラッチョの木とオリーブの木が植えられている。フルオーダーメイドの8000万円のロールス・ロイスや3000万円のメルセデス・AMGを含む3台の愛車たちは駐車場で眩(まばゆ)い存在感を放っていた。 玄関をくぐり抜けると、1階には広々としたリビングと700万円の巨大ワインセラーに、一本10万円以上する高級シャンパンやワインが並べられている。2、3階には寝室や1000万円かけて作られたトレーニングジムもあるが、こだわったのは4階にある屋上プールだという。 「屋上プールは渋谷の街を一望できるインフィニティプールで、4000万円かけて作った金の滑り台もあります。他にも、人工炭酸泉の露天風呂、サウナ、水風呂などが完備。プールに入りながらふと、桜が見たいなと思いつき、工事終盤に無理やりしだれ桜も植えましたね」 ギラギラのシャンデリアに加え、エレベーターやトイレの内装はすべて金ピカ。まさに″成金趣味″豪邸の誕生だった。 「この家の宣伝効果は絶大で、8月末からゴールデン帯のテレビ番組が2本、深夜で1本、すでに放映されています。ゴールデンタイムの1時間番組が丸々この家の特集になったんですが、ゴールデン帯だと1分のCMで800万円くらいかかりますから、とてつもない広告費。インフルエンサーたちも紹介してくれて、TikTokで600万回、YouTubeで100万回再生されました」 ◆敏腕経営者の素顔 西村氏はけっして成金ではなく、努力と創意工夫で成功を収めた実業家。しかし、若い頃は実際に成金を目指しギラついていた時期もあったと回顧する。 「自分の腕一本で、とにかくビッグになってやるみたいなところがありました。20代の頃は六本木ヒルズに住んで、フェラーリを乗り回して、夜は銀座や六本木で豪遊して、みたいな人生に憧れて(笑)」 コンサルティング会社への就職を経て25歳で起業した西村氏だが、最初から成功者の道のりを歩んでいたわけではない。当時の事業であるボイスメールは軌道に乗らず、2年間で7000万円の借金。そこから試行錯誤を繰り返し、’12年開始の海外用WiFiレンタル事業『イモトのWiFi』が爆発的にヒットした。 「『イモトのWiFi』以前はBtoBといわれる法人向けサービス中心でしたが、BtoCといわれる消費者向けサービスへ路線を変更したんです。それがハマって軌道に乗るものの、コロナ禍で大打撃を受けました。売り上げは98%減となり、さすがにあの時は″倒産″の2文字が頭を過(よぎ)って、身体が震えましたね」 しかし、コロナ禍で向かい風があれば追い風になる事業もあるのではないか、と目を付けたのがPCR検査事業だった。 「’19年に設立した『にしたんクリニック』はもともと美容クリニックですが、コロナ禍でどこよりも早く、PCR検査事業に着手しました。これは、検査会場に出向くのではなく、自宅に発送されるキットで唾液を採取し返送するだけで、陽性か陰性かを検査できる。ピーク時は一日1億円、売上高は176億円を超え、わずか1年弱でV字回復を成し遂げたんです」 『にしたんクリニック』のCMといえば、歌手の郷ひろみ(69)とお笑いトリオ『3時のヒロイン』が煌(きら)びやかな衣裳を身に纏(まと)い、激しく歌って踊り狂う……。かと思えば、俳優の船越英一郎(64)と黒木瞳(64)がサスペンスドラマばりに「ニシタン、タン」というフレーズを繰り返す。 「とにかく『認知を取りに行く』というのが僕のマーケティング理論です。人は、名前を聞いたことがない商品より、名前を知っているような多くの人に周知されている商品に安心感を覚えるからです」 「認知を取りに行く」という西村氏の戦略は徹底している。CMではただただ「ニシタン、タン」のフレーズを繰り返す一方で、美容、ダイエットサポートなどの診療内容については一切説明されない。 大物芸能人たちの出演料だけで一人あたり数千万円以上するのにもかかわらず、なぜクリニック名しか告知しないのか。 「『にしたんクリニック』という言葉を繰り返し聞いてもらえれば、サービスの詳しい内容を伝える必要はないのです。名前さえ記憶に残すことができれば、興味を持った人はクリニックのことを必ずネットで調べてくれるので」 インパクトを追求した結果が、誰もが知っている有名人を起用し、ユニークな映像やテンポの良い歌に乗せて『にしたん』、『イモトのWiFi』のフレーズをとにかく繰り返す、という手法になったわけだ。とはいうものの強烈なインパクトがゆえに、「ウザい」「何度も繰り返されるフレーズが嫌い」といった否定的な意見を持つ人も散見された。 「ニーズが多様化しているこの時代、みんなに受け入れられるCMを作ることはほぼ不可能です。インパクトがあるCMを作れば、それが嫌いな人も出てきてしまう。しかし、そこを気にしていると平凡なものしか作れません」 実際、万人受けを無視したCM戦略は功を奏したと語る。 「CM総合研究所でCM好感度を数値化して、月に2回ランキングを出しているのですが、2000以上あるCMの中で約半分にはまったくポイントが付かない。つまり、世の中の半分のCMは誰の頭にも残ってないということ。悪いイメージにならないようこだわった結果、印象に残らないCMになったのでは意味がありません。 僕はアンチが出るということは、認知度が高いことの裏返しだと思っています。実際、『にしたん』の新しいCMを流した時、初動3日間ぐらいのSNSでアンチ意見が多い場合はそのCMはすごく人気が出ますね」 ◆新事業とその先へ 事業の成功を受け、会社が拡大するにつれて自身の価値観も変わったという。 「やっぱりお金一辺倒で行くと、会社がある程度大きくなった時に人が付いてこなくなるんですよ。『社長は結局お金かよ』ってなるから。それと、自分の子供が生まれたのは大きかったですね。子供って高級レストランに行くより、公園へ散歩に行くだけで喜ぶ。そういう幸福感がだんだん実感できるようになってきて。もちろんお金はあるに越したことはないけれど、お金がなくても、温かい人間関係がある職場や家族がいたらそれで幸せだな、って思えるようになりました」 そんな西村氏が今後の主力事業として推し進めているのが″不妊治療″だ。10年ほど前から構想を温め、’22年6月から『にしたんARTクリニック』新宿院開院の支援を始めている。 「人生の幸福感というものが自分なりにわかってきて、ピュアに社会を良くしていきたいなと考えた時、不妊治療が一番社会性のある事業だと感じました。新しい命が生まれたら、その家庭のストーリーがそこからスタートするわけじゃないですか。もらう『ありがとう』の重みが全然違うし、こんないい仕事ないな、って。残りの人生は、不妊治療にフルコミットしてやっていきたい」 単なるビジネスの成功だけではなく、社会全体に対する貢献を目指している西村氏。その一方で、自身の生き方にもこだわっていきたいと明かす。 「僕ね、大学時代は葬儀会社でアルバイトをしていたんです。参列者の数や顔ぶれ、立ち居振る舞いなど、葬儀には亡くなった人の生きざまがそのまま表れる。多くの参列者が訪れる人がいる一方で、誰も来てくれない葬儀もあって。だから、僕が死んで葬式をやった時には『西村さん、ありがとう』と言ってくれる人の数をできるだけ多くしたい。自分はそういう生き方をしていきたいと思っています」 大豪邸やCMに続く次なる戦略も、世間をアッと驚かせてくれるに違いない。 『FRIDAY』2024年12月6日号より
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