ドラッグストア“全国2万店超”なおも乱立のなぜ? 「最高裁判所」が深く関わっている“意外な理由”
銭湯の「距離制限規定」は「合憲」と判断
なお、同様にかつて距離制限規定の合憲性が議論となった「銭湯」については、最高裁は距離制限規定を「合憲」とした(最高裁平成元年(1989年)1月20日判決)。その理由は、自家風呂をもたない経済的弱者の人々のために銭湯は必要なインフラであること、銭湯を営む業者の多くは小規模な家族経営が多く経営基盤を保護する必要があるということだった(※)。 つまり、銭湯については、弱者保護のための「積極目的の規制」なので、裁判所は国会による政策的・技術的観点からの「距離制限を置いて自由競争を制限すべき」という裁量的判断を尊重したものといえる。 ※詳細は【関連記事】#参照。
「規制緩和による弊害」の問題が深刻化?
今日では、むしろ規制緩和による弊害の問題が指摘されている。 国民の生命・健康を守る「警察目的の規制」に関していえば、多数の死者を出した「機能性表示食品」の「紅麹」による健康被害の問題もその表れである。「機能性表示食品」については国が安全性や効能を審査せず、企業が一定の科学的根拠について消費者庁に届け出ればよいとしている。また、製造工程の管理や検査も医薬品よりも緩い。 また、経済的弱者を保護するための「積極目的」の規制については、労働関係の規制を緩和したことによる「ワーキングプア」の問題などが指摘されるようになっている。 1990年代半ば以降、政治の場で「規制緩和」がしきりに訴えられ、その流れは21世紀に入ってから顕著になった。しかし、経済活動の自由を制約する「規制」のなかには、国民の生命・身体を守るための「警察目的の規制」や経済的弱者保護のための「積極目的の規制」もあることを見過ごしてはならない。 それらの弊害の問題は、今後、訴訟として顕在化する可能性が考えられる。そのとき、裁判所はどのような判断を下すことになるのだろうか。
弁護士JP編集部