華麗な殺陣で人気「くノ一・未央」が寿引退…伊賀忍者特殊軍団・阿修羅で初の女性
三重県伊賀市の伊賀流忍者博物館でショーを披露する「伊賀忍者特殊軍団・阿修羅(あしゅら)」メンバー「くノ一・未央」(本名・渡辺未央)さん(36)が会社員男性(42)と結婚し、30日のショーを最後に引退する。出身地の岐阜県恵那市に戻り、家業の広告会社を手伝うという。「忍者の活動をやりきった。悔いはありません」。すがすがしい表情で、次のステージへ歩み出す。(山本哲生)
未央さんは東京女子体育大卒の元体操選手。2010年、阿修羅頭領(かしら)の浮田半蔵さん(64)に憧れ、初の女性メンバーとして加入。二丁鎌、くみひもの術、サイ、鉤縄(かぎなわ)などを習得し、華麗なアクロバットを取り入れた殺陣で人気を博した。
ワシントン、北京、タイ、ニューヨークなどの海外公演に参加して、伊賀忍者を世界にアピール。21年の東京五輪聖火リレーでは、伊賀市区間の最終走者を務めた。22年10月に交通事故で左足甲に重傷を負ったが、懸命のリハビリを経て昨年夏、ショーに復帰。「不屈のくノ一」として喝采を浴びた。
しかし、後遺症は続いており、今も歩くだけで痛みが走る状態。「今夏は何とかショーに出られそうだけど、来年はこんなに動けないかもしれない」。春頃から引退が頭をよぎった。
ちょうど同じ頃から男性との交際が始まった。元モトクロスレーサーで、未央さんと同様、事故で右足を負傷して引退した男性は、未央さんの悩みを優しく受け止めてくれた。「恵那に戻って会社を手伝ってほしい」という父の希望に、男性が「一緒に恵那に行こう」と受け入れた。とんとん拍子に話が進み、12月、花嫁となることが決まった。
一番の思い出は「ワシントン公演。伊賀忍者を世界に広めることが夢だったので」と振り返る。14年のうち8年を伊賀で暮らした。コロナ禍の20年、ショーが中止された時には、トレーニングに打ち込む未央さんに、近所の人が「そのうち忍者も再開するやろ、頑張れよ」と声を掛け、励ましてくれた。「伊賀は心の古里、第二の故郷です」
22~24日に東京で開かれる「伊賀上野NINJAフェスタin上野恩賜公園」のステージと、26、30日の忍者博物館のショーを最後に、「くノ一・未央」の活動に終止符を打つ。