戦火に揺れるキーウ、14歳少女のふさいだ心を救った日本のロリータ・ファッション
日本で独自の進化を遂げたロリータ・ファッションは海外でも広がっている。 筆者は現在、ウクライナのキーウに滞在しているが、10月20日にウクライナの首都キーウで行われたロリータ・ファッション愛好者のオフ会に参加し、その光景を目の当たりにした。 【写真】キーウの少女が持っていた「ちいかわ」のスマホケース。服はメルカリで買っているという ■ きっかけは『NANA』 きっかけは、ウクライナ人の友人の子供ミラナ(14歳)が筆者をイベントに誘ってきたことだった。ミラナは非常に熱心なロリータ・ファッションの愛好者だ。 ミラナがロリータ・ファッションに目覚めたのには、2022年のロシアによるウクライナへの全面侵攻が影響していた。全面侵攻直後、キーウの中心近くに住むミラナは兄と叔母とその子供と一緒にメトロでの避難生活を送った。母親はミラナが幼いころ病死している。また、父親は前線で戦っていた。 ミラナたちは2週間ほどメトロでの避難生活をした後、叔母が運転する車でキーウを脱出した。その後ヨーロッパやUAEなどで国外生活を強いられたのである。先が見えない混乱した状況の中脱出したため、必要最低限の物しかもっていなかったという。 半年くらいたち、キーウは最悪の状態を脱した。そして、ミラナと兄は自ら帰国を望みキーウへと戻ってきた。とは言っても、戦争は続いている。父親は前線で戦っており、連絡もままならならず心は休まらなかったという。ただ、漫画を読んだりアニメを見たりしている時は嫌なことを考えなくてすむ。そして出会ったのが日本の漫画『NANA』だったという。 帰国したとき強く思ったのが、何か今までと違うものが着たいということだった、とミラナは言った。避難生活中持っていた服は数着だけだった。毎日同じ服ばかりで気が滅入ったという。 漫画の『NANA』の中で見つけたのがロリータ・ファッションだった。たまに前線から帰ってくる父親にお願いしてインターネットでロリータ・ファッションの服を買った。父親も娘に好きなものがあること、さらにかわいい服を着て喜ぶ姿がうれしかったという。