予選は中止になったけど……面白いぞウエットタイヤ開発戦線! 4社それぞれからポジティブなコメント|スーパーGT第6戦
GT500から受け継いだパターン、どの雨量でも速さあり。ミシュランは手応え十分
“雨のミシュラン”は健在だ。昨年限りでGT500クラスでの供給を終了し、今季はGT300クラスの3台に供給するミシュランは、20号車シェイドレーシング GR86 GTがトップ、7号車Studie BMW M4が4番手、45号車PONOS FERRARI 296が5番手と全車トップ5入り。同社は今季から、昨年のGT500で圧倒的パフォーマンスを誇ったトレッドパターンを採用したが、やはりと言うべきか速さを見せた。 ミシュランの新パターン(もとい昨年までのGT500のパターン)は、その溝の入り方から、“ちょい濡れ路面に強い”という印象を持たれがちだが、その真骨頂はちょい濡れもフルウエットも強いところ。開発を率いる小田島広明モータースポーツダイレクターも、今回の結果を受けて盤石な手応えを掴んでいるようだ。 「新しいパターンの方が、どちらかというと使用できるウインドウの幅が広く持てます。ブロック(溝と溝の間にある、独立した塊)に大きさがあるので、降ったり止んだりで水量が変化してもブロックが壊れにくく、摩耗があまり進みにくいパターンになっています」 新パターン投入の経緯を、そう説明した小田島ダイレクター。公式練習の結果を踏まえ、決勝に向けて次のように語った。 「走行中止になるか際どいレベルの雨でしたが、その中でチームさんごとにいくつかのスペックを試しながら練習走行を走っていました」 「それらを試していたタイミングによって順位の差がついてしまっていますが、コンディションに合ったスペックの確認ができましたので、明日雨が降っても適切なスペックを投入できるという点で手応えがあります」
ウィークポイントがなくなってしまう……ライバルも恐れるブリヂストン勢の新タイヤ
そして最後はブリヂストン。GT500クラスでは現在8連覇中で、今季は15台中12台に供給する絶対王者だ。 そんなブリヂストンも、ウエット路面においても他を圧倒すべく、開発を続けている。これまではライバルメーカーとは対照的にダンプ路面を課題としていたブリヂストンは、昨年の開幕前テストで新たなパターンのタイヤを投入。しかしながら「水量が多い際のパフォーマンスが落ち過ぎていた。それでも他社さん対比では劣っていなかったと思っていますが、安全第一ということを考えて(BSタイヤ開発責任者 山本貴彦氏)」ということで昨シーズンの採用は見送った。そして今季ついに、同系統のパターンが正式採用された。 このタイヤについては、ライバルメーカーからも警戒する声が挙がっている。64号車Moduloの伊沢は、「BSの新しいパターンでのスピードは未知数で強そうだと感じる」と語った。 「間違いなく雨量の少ないところに合わせてきているはずなのに、雨量が多い時でも普通に走っているのが怖いです」 「F1のインターミディエイトタイヤのような溝ですよね。あのパターンを見た時に、あれで雨量が多い時は無理じゃないかと思っていましたし、逆に僕らは雨量が多い時でも意外と走れるので、チャンスがあると思っていたのですが、意外と走るじゃんって……(笑)」 ブリヂストン勢のドライバーからは、GT500、GT300共にポジティブな声が聞こえてきている。公式練習最速で、GT500クラスのポールポジションから決勝を迎える38号車KeePer CERUMO GR Supraの石浦宏明は、新タイヤの長所を次のように説明した。 「以前のパターンと比べると、水が多い時も少ない時も、全ての条件で性能が上がっています。テストで確認できていた性能を、今回改めて確認することができました」 「見た目としては、以前から開発してきたものになりますが、その中でもどんどん進化・開発を重ねてきています。明日はどんな天気になるか分かりませんが、それが威力を発揮してくれると期待しています」 このように、4メーカー全てが開発の成果をポジティブに捉えている様子。22日(日)に行なわれる決勝も完全ドライ路面でスタートとなる可能性は低く、“ウエットタイヤ戦線”の続きが見られるかもしれない。
戎井健一郎