淫行条例化めぐり長野で続く議論 誇りだった「県民運動」見直しの是非は?
知事「県民運動の歴史は無視できない」
県議会の代表質問では自民党が「条例化については県民の間にさまざまな意見がある。(これまでの県民運動から)条例制定の動きに至るまでの経過や知事の考え方が県民に十分伝わっていなかったのではないか。知事は県民運動を条例に位置付けるとしているが、その場合も県民運動とは何かを明確に規定しないと県民はどのようなことをすればいいのか分からないのではないか」と指摘。阿部知事は「条例化については、県民運動とは何かを条例上に示していきたい」と答えて、県民運動の歴史を無視できないとの姿勢を示しました。 また冤罪の防止については、「“疑わしきは罰せず”という刑事裁判の大前提で対応し、ほかの県の条例に比べても(犯罪の)構成要件をより明確化し、乱用を防ぐ規定も盛り込んだ」と説明。他の会派の質問に対しても同様の見解を述べました。 3月7日の委員会審議では「県民運動を進めてきたのは素晴らしいことだが、そこで社会情勢が変わったからとすぐに条例化へ行くのではなく、今後どうしたらいいのか基本的な論議をすべきではなかったのか。罰則を設けたのは性急すぎないか」との意見も出ていました。ある議員は「県民がみな納得してこその条例だが、このような状態では無理だ。家出をしないような子供を育てることこそ青少年対策であって、そうした本質論なしに罰則を設けても抑止力になるのか」と厳しく批判しました。
地域の力で取り組む力を削がれる?
一方で、「長野県が全国でも最後の条例制定をするというのなら、むしろこれをきっかけに国に(淫行処罰の)法整備を求めるべきではないか」と条例化からさらに飛躍した対策を展望する意見もあり、賛否が真っ向から向き合う論議になりました。 自民党の中でも条例化に距離を置く議員の一人は「県民運動の端緒をつくった西沢知事は条例化の働きかけに応えようとしなかった。当時、長野県では風俗風呂も地域の住民の力で造らせなかった。西沢知事は県民運動につながるそうした県民性を理解していたのではないか」と西沢知事の先見性を評価。「県民運動もマンネリ化などの問題を抱えていると思うが、人任せにしないで地域の力で地道に問題に取り組んでいくことが大切なんですよ」と話します。