「打撃は哲学が全く違う」――なぜ日本人投手はMLBで成功するのか “指標”となる元ヤ軍のNPB助っ人の言葉
日本球界で経験を積んだ男の言葉は、実に率直だった。 今年7月から約半年間、DeNAに在籍したマイク・フォードは、現地時間11月6日に米ポッドキャスト番組『Foul Territory』のゲスト出演。同番組の司会で、MLB通算2043安打を誇る強打の名捕手のAJ・ピアジンスキー氏らとともにNPBに対する持論を展開した。 あらゆるテーマが論じられた。その中でファンに愛された助っ人が「かなり違う」と強調したのが、日米の投手陣によるスタイルの違いだった。 かくといフォードもスタイルの違いに馴染むのには苦戦した。外国人枠の関係で1軍でのチャンスが限られたレギュラーシーズンは出場6試合で打率.200、1本塁打、2打点と鳴かず飛ばず。それでも、2軍戦出場41試合で8本塁打を放った。 いわば「秘密兵器」として加わった日本シリーズでは出場4試合で打率.333と上々の結果を残したフォード。メジャーリーグではヤンキースなど6球団を渡り歩いたジャーニーマンは「(飛ばない)ボールの特性の影響はあると思う」と前置きした上で、日本の投手陣への感想を口にした。 「日本の投手はスピードガンの数字はそれほど高くないかもしれないけど、速球は信じられないほどの回転数がある。それと投げ方も独特で、アメリカの投手たちとは違う角度から球が来る。日本の投手は全員が2メートルぐらい上から160キロを超える球を投げるというわけでは明らかにない。むしろ180から185センチぐらいのところ浮き上がる球が来る感じなんだ」 今季もメジャーリーグでは、日本人投手たちの活躍が目立った。とりわけDeNAからポスティングでカブス入りを果たした今永昇太のパフォーマンスは興味深いものあった。 今永の投げた速球の平均速度は91.7マイル(約147.5キロ)。抜群のパワーアームというわけではないが、平均回転数はなんと2442を記録。その球質もあって、防御率2.91、WHIP1.02、FIP3.72と上々のスタッツを記録。メジャーの強打者にも十分に通用していた。 今永が1年目から成功を収められた要因はフォードの言う投球スタイルの違いにあるのかもしれない。日本での経験を「素晴らしいよ」と振り返った32歳の助っ人は、番組内でこうも断言している。 「僕が思うに日本人は投手の方が打者よりもアメリカに適応しやすいかもしれない。打撃は哲学が全く違うからだ。その違いを見られたのは面白かったよ」 アメリカとは異なる投球哲学をどう活かし、“メジャー仕様”へとグレードアップさせていくか。それが今後に世界に羽ばたく日本人投手たちには求められているのかもしれない。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]