物言う株主が都心高層ビルの「含み益」実現要求-地価上昇で広がりも
(ブルームバーグ): アクティビスト(物言う株主)が、都心の高層ビルを中心に長年隠されてきた不動産の含み益(簿価と時価との差額)を顕在化させようと動いている。日本の地価が上昇する中、高層ビル以外も含め、上場企業が抱える含み益は22兆円に上るとの見方もある。
日本最大のデベロッパーである三井不動産は11日、新たに策定した経営計画の中で、今後3年間で固定資産や販売用不動産を2兆円程度売却すると発表した。アクティビストの米エリオット・マネジメントは2月時点で同社株を少なくとも2.5%程度保有していた。
企業による不動産の長期保有に起因する含み益は、毎年の減価償却により簿価が下がる一方、地価上昇などにより拡大してきた。東京証券取引所が上場企業に資産効率の改善を促したこともあり、日本の不動産に着目したアクティビストの動きは昨年から活発化していた。
含み益の拡大を背景に「今年は過剰な金融資産だけでなく、余分な不動産保有を巡り、アクティビストやエンゲージメントファンドが企業と争う例がますます増えるだろう」。CLSAのブローカー、ジョン・シーグリム氏はこう指摘する。
事情に詳しい関係者によれば、エリオットは三井不が都内に複数持つ高層ビルを含む不動産の価値を売却により実現することに重点を置いている。これまでも1兆円相当の自社株買いや保有するオリエンタルランド株の一部売却を求めていた。
国土交通省が3月26日公表した公示地価(2024年1月1日時点)は、全用途の全国平均が前年比2.3%プラスとバブル経済崩壊後で最も高い上昇率となった。都心のオフィス空室率は3月に3年ぶりの低水準に低下するなどオフィス需要も堅調だ。
都心の一等地
含み益の代表例は不動産会社が都心の一等地などに持つ高層ビルだ。エリオットが投資する三井不の「東京ミッドタウン」は、六本木の中心地にオフィスやザ・リッツ・カールトン・ホテルのほか、商業施設などを構える54階建ての超高層ビルだ。同社が開発し、2007年に開業した。