物言う株主が都心高層ビルの「含み益」実現要求-地価上昇で広がりも
三井不のバランスシート(23年3月期)上では、それまでの減価償却を加味した東京ミッドタウンの簿価は1900億円だった。しかし、直近の市場評価によれば、売却額は5000億円以上になるという。含み益は3000億円以上に上る計算だ。
並んで代表的なのは、東京駅と皇居との間の土地を100年以上前に購入した三菱地所所有の「丸の内ビルディング」だ。同社の有価証券報告書によると簿価は1000億円。これに対しアナリストは時価は5倍以上の5700億円程度とみている。同社はまだアクティビストの標的になっていない。
三井不の広報担当者は、個別の投資家に関してはコメントを控えるとし、立地や規模、設備などで最上級に相当するSクラス物件の売却も検討し、含み益などの付加価値を顕在化させていきたいと述べた。エリオットは声明で三井不の新経営計画を評価した。三菱地所の広報担当者はコメントを控えるとした。
不動産会社以外も標的に
アクティビストのターゲットになるのは、不動産会社だけではない。CLSAのシーグリム氏によれば、不動産賃貸業を営む上場企業は、不動産業者(55社)を含め約700社に上る。保有不動産の簿価は全体で44兆円だが、時価評価は50%高い約66兆円に上ると推定。含み益は約22兆円になる計算だ。
東京を拠点とするストラテジックキャピタルは、建設・エンジニアリングのワキタに、不動産賃貸業を営む合理性がないとして賃貸物件の売却を求めた。シンガポールの3Dインベストメント・パートナーズも富士ソフトやサッポロホールディングスに、本業集中のため保有不動産の売却などを求めている。
三井不の有価証券報告書によると、23年3月末時点の保有不動産の簿価は3兆4000億円、時価は6兆7000億円。エリオットによる保有が明らかになって以降、三井不の株価は24%以上急騰。直近では1600円台後半で推移している。ただ、エリオットが適正と考える2400円を下回っていると関係者は指摘する。