JR東海「リニア中央新幹線」に静岡県知事交代でも残る3つの難題 プロジェクトを左右する「工期・資金・人材」
『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太「命の水」の嘘』などの著書がある小林一哉氏は、赤石断層(赤石山脈の西側を走る断層)の存在を「やっかい」と指摘する。「いくつか破砕帯(砕かれた岩が一定の幅を持って帯状に連なっているもの)があるため、先進抗などを掘る際に大量の水が出る可能性はある」と話す。 ■「7兆円で足りるのか」と現場でざわつく 難題の2つ目は資金の問題だ。「お金は大丈夫か。7兆円で足りるのか」。JR東海の現場では目下、このような懸念の声でざわついているという。
JR東海は工事費の見通しを7.04兆円としているが、これは2021年4月の公表時点までの物価を基に算出している。公表後の3年間でコンクリートや鉄筋などの資材、そして作業員の労務費が一段と高騰している。 JR東海は「あらゆる観点からコストダウンの可能性を探る。技術のブラッシュアップや営業線の運営・保守のさらなるコストダウンにも取り組む」としている。しかし、超大手ゼネコンが頭を抱える資材高などの影響をどこまでカバーできるかは不透明だ。
資金の問題としては、財政投融資の返済における懸念もある。JR東海は低利で3兆円の融資を受けており、この返済が2046年ごろから始まる。同社は10年程度かけて返済する計画だ。 仮に、リニアの全線開業が10年遅れれば、稼ぎ頭の東海道新幹線で得た利益を内部留保する期間が10年伸びることになる。その点はJR東海として有利に見える。一方で返済のタイミングは、まだ工事資金が必要な時期と重なることも考えられる。
状況によっては、金融機関の融資などによる、さらなる資金調達が必要になってくるかもしれない。 ■関連部署での退職者問題も悩ましい 3つ目の難題は人員確保の問題だ。JR東海には、中央新幹線推進本部などでリニア工事に携わっている人員が、2023年7月時点で出向社員を含めて1870人いる。 2023年度は電気系統と機械系統を中心に約60人を増員した。2024年度も約60人の増員を計画する。ところが「辞める人がけっこういる」(JR東海関係者)という。