船井電機「給料払えません。即時解雇です」 社員が気づけなかった「3つ」の危険信号
「破産です。給料は払えません。即時解雇です」 勤めている会社でいつものように働いているとき、急にそんなことを告げられたらと想像していただきたい。 【画像】突然、給与は払えません。え、FUNAIのテレビはそこそこ売れていたのに、なぜ破産? ネットで話題の「ミュゼ転がし」、トラブルが絶えない脱毛サロン、船井電機の本社(全13枚) 家のローン、子どもの教育費など、頭に描いていた人生設計がガラガラと音を立てて崩れてしまうのではないか。蓄えのない人などは「明日からどうやって食べていけばいいのだ」と目の前が真っ暗になってしまうかもしれない。そんな「サラリーマンの死刑宣告」を実際に告げられてしまった気の毒な人々がいる。 破産手続きに入った老舗AV機器メーカー「船井電機」(大阪府大東市)の約2000人の従業員である。 10月24日、会社で勤務をしていると午後1時半くらいに社内放送で食堂に集まるように告げられた。そこには弁護士がいて、会社が破産手続きに入ったこと、全員を解雇せざるを得ないこと、翌25日に支給される給料も予定通りに支払われないこと、などの説明を受けたという。 この悲劇的なニュースを受けて、サラリーマンの間ではさまざまな議論が交わされている。中でも一部で盛り上がっているのが、「逃げ遅れ社員にならないためにはどうすべきか」である。 「ネズミは沈む船を見捨てる」のことわざにもあるように、危機管理能力に長けた人はヤバい組織に早々に見切りをつけ、転職していくものだ。のんびりしていると、今回のように給料をもらえなかったり、失業期間が長引いてしまったりと被害が甚大だ。 これからのサラリーマンは自己防衛のためにも、組織の崩壊を素早く察知し、逃げ出すスキルが必要になっていくというのである。 確かに今回の船井電機のケースを見ても、社員が「逃げる」と決断してもおかしくないタイミングが「3つ」ほどあった。そこで異変に気付いて転職したか、気付かずにそのまま在職し続けたかで、社会人としてのキャリアに大きな違いが出てしまっているのも事実だ。
船井電機の現実はどうだったのか
このような話を聞くと、「そんなのは後からいくらでもこじつけられる。末端の社員には会社の異変など分かるわけがないだろ」と冷笑する人もいるが、現実はちょっと違う。 『船井電機破産、嵐の一日 解雇された社員「不穏な伏線は夏ごろに」』(朝日新聞 10月26日)で取り上げられている社員のように、少し前から「うちの会社、そろそろヤバいかも」と感じていたカンのいい人はそれなりにいた。気付いていたけれど、多くの人はその不審な動きを、自社の危機に結び付けられなかったのである。 なぜかというと、この不審な動きというものが、多くの社員が関わっている「本業」と関係がないからだ。 既に多くの専門家が指摘しているが、今回の船井電機の破産は「本業」だけが原因ではない。 報道では、負債総額は2024年3月末時点で約460億円だが、主力の映像機器事業だけでこの負債が生まれたとは考えにくい。 液晶テレビの製造は確かにかつてに比べれば不振に苦しんでいたが、それでも2024年3月期の連結売上高は約851億円(前期比4.1%増)。国内とアジアは低調だったが、北米市場の売り上げが伸びていて、当初の計画よりも上回っていた。 船井電機・ホールディングスの事業報告書(2022年4月1日から2023年3月31日)の中で自社の財務についてこう述べている。 「金融機関との関係は引き続き良好であり、当社グループの当連結会計年度末現在の現金および預金残高は221億96百万円となっております。当連結会計年度において23億63百万円の親会社株主に帰属する当期純利益を計上しており、当連結会計年度末現在の純資産も255億79百万円あり、財務健全性に問題はないものと考えております」 つまり、このタイミングでは財務的に何も問題がなかったが、2023年4月1日以降から「何か」が起きて、船井電機は460億円の負債を抱えたということである。これは例年通りに推移する「液晶テレビ事業」などが原因とは考えにくい。