船井電機「給料払えません。即時解雇です」 社員が気づけなかった「3つ」の危険信号
なぜ船井電機は倒産に至ってしまったのか
2023年4月以降、船井電機に一体何が起きたのか。細かなところはこれから報道で明らかになっていくだろうが、ネットやSNSでは「ミュゼ転がし」という言葉が注目を集めている。 船井電機・ホールディングスが2023年4月に完全子会社化した脱毛サロンチェーン「ミュゼプラチナム」を舞台装置にした、「資産切り売り」の被害に遭ったのではないかという「説」が唱えられているのだ。 ちなみに、この「ミュゼ転がし」という言葉は、オリンパスの不正会計事件などの調査報道で知られる情報誌『FACTA』が2024年8月21日に報じていた『見るも無惨! どすぐろい勢力に侵食された「船井電機」』という記事から来ている。船井電機破産を受けて再掲されているので興味のある人はお読みいただきたい。 この記事によれば、船井電機・ホールディングスのミュゼプラチナム買収は初めからおかしなことばかりだという。買収の4カ月前となる2022年12月、船井電機が所有する本社ビルに「ミュゼプラチナシステムズ」という横浜市内の合同会社を債務者として、横浜幸銀信用組合が39億6000万円の根抵当権を設定していた。 しかも、奇妙なことに船井電機は2024年3月にミュゼプラチナムを売却しているのだが、このわずか1年の間に、ミュゼプラチナムのせいで株式を仮差し押さえられてしまうのである。 実はミュゼプラチナムはネット広告の請求に対して、アフィリエイト広告の未払いが約22億円もあった。しかし、いくら請求してもミュゼプラチナムが払わないので、連帯保証を付けていた親会社の船井電機に請求された。これを支払わず、東京地裁に株式の仮差押えが認められたのである。
社員向け「破産説明会」で語られたこと
おかしなことはまだ続く。船井電機に経営放棄されたミュゼプラチナムは、先ほど登場した「ミュゼプラチナシステムズ合同会社」を経て、「MIT」と社名変更するなど複雑な動きを見せている。報道によると、周辺にはクーポン販売事業者や貸金業者など、脱毛エステとは関係のないプレーヤーたちの姿が見られるという。 このような不可解な状況を見ていると、確かに『FACTA』が指摘するように、何者かがミュゼプラチナムを用いて船井電機の資産を「侵食」しているように見えなくもない。気になるのは、船井電機幹部も侵食が事実であると認めるかのような発言をしていることだ。 社員向けの破産説明会で、幹部がこう述べたという。 「いろんな人が会社のお金を抜く行為も起こっていた。それは止めるべきで、伝統ある会社をぐちゃぐちゃなまま閉めてはいけない」(朝日新聞 10月26日) この言葉からも分かるように、船井電機破産は「本業」が傾いていたこともあるが、トドメを刺したのは「外部への資産流出」である可能性が高い。東京商工リサーチの「TSR情報全国版」(2024年10月30日号)でも、ミュゼプラチナムへの資金支援などによる多額の資金流出も大きかったようだ、という分析を掲載している。 では、現場で働く社員たちに、会社がそのようなおかしな道に進んでいることを察知して「逃げる」決断をすることは可能だったのか。 いろいろな意見があるだろうが、船井電機社員の場合、以下の3つの決断ポイントがあった。 (1)2023年4月、ミュゼプラチナム完全子会社化 (2)2024年3月、ミュゼプラチナム売却 (3)2024年8月、『FACTA』報道 まず、(1)は「ミュゼ転がし」が注目されたから言っているわけではない。買収当時から不審なにおいがプンプン漂っていた。