GUの米国進出、レッドオーシャンでどう戦う? “ほぼ無名”からZ世代人気をつかめるか
連載:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線
小売業界に、デジタル・トランスフォーメーションの波が訪れている。本連載では、シリコンバレー在住の石角友愛(パロアルトインサイトCEO・AIビジネスデザイナー)が、米国のリテール業界の最前線の紹介を通し、時代の変化を先読みする。 【画像】30~40ドルのGUのセーター、70ドル以上のユニクロのセーター、ジェンダーレスなデザインの服など(計8枚) こんにちは。パロアルトインサイトCEOの石角友愛です。今回は、GUの米国進出の戦略について紹介します。これまで、GUは米国で挑戦し続けてきたものの、歩みは遅い印象でした。 GUは2022年秋、同社としては初めてニューヨークのソーホーでポップアップストアを展開しましたが、その後大きな動きはありませんでした。それが2024年9月19日、ついに同エリアのメインストリートに専門店をオープンし話題になっているのです。ファッションプレスでは、開店前の午前9時の時点で150人が行列を作っていたと報じられています。 幸先の良さそうに見えるGUですが、アパレルというレッドオーシャンで地位を築くのはそう甘くないでしょう。今回の記事では、GUの米国進出における差別化戦略や、市場開拓とブランド浸透のために越えなければいけない壁について考察したいと思います。 まず、GUは米国で評価されるためにどのようなポイントを抑えているのでしょうか。GUは米国市場で若年層、中でもZ世代をターゲットに事業拡大を図っていると言われおり、以下のような特徴を持っています。 1. 価格の安さ 2. ファッショントレンドを意識したデザイン 3. ジェンダーレスデザイン 4. 厳選された品ぞろえ まず、価格帯としては、ユニクロやH&M、Zara、GAPなどより安く、SHEINやTemuほどのウルトラファストファッションよりは高いという中間の価格帯を狙っています。例えば、これからの時期に欠かせないセーターは、GUでは30~40ドルほどで販売されています。 それに比べるとユニクロでは、カシミヤなど質にこだわったセーター類が70ドル以上で売られています。 また、GUではサイズやカラーバリエーションが豊富でファッショントレンドを意識した 「ジェンダーレスアイテム」を豊富に展開しています。ジェンダーレスデザインの特徴として、セクシュアリティ、性別、性自認、年齢に関係なく、誰にでもフィットするようにデザインされている点が挙げられます。 実際、米国のGU店舗に足を運んだ、ファッション系のWebサイト「FASHIONISTA」の編集者は記事内で「モデルやマネキンが着ている服装は、若くトレンディなものが多く、厳密には男性用と女性用のセクションが分かれているが、女性のマネキンが男性用の服を着ていたり、その逆もあったりして、性別に関係なく両方の服を選べるようになっている」と述べています。店舗内のデザインにもジェンダーレスが反映されていると言えるでしょう。 実は、世界全体でこのようなジェンダーレスファッションに対する需要が高まっています。 Fashion Law Journalの記事によると、ジェンダーニュートラルな衣料品市場は、2021年から2030年にかけて年平均成長率(CAGR)6.5%で成長すると予測されています。 また、米国の調査会社・Statista社の調査によると、米国では36%の消費者が自身のジェンダーアイデンティティ外の衣料品を購入した経験があり、スウェーデンでは33%、英国でも31%の消費者が同様の購買行動を示しているといいます。 世代別の傾向としては、Z世代を中心にジェンダーニュートラルファッションへの関心が高まっており、グローバルではZ世代のオンラインショッパーの約50%が自身のジェンダーアイデンティティ外の衣料品を購入していることが分かりました。約70%の消費者が将来的にジェンダーニュートラルなファッションアイテムを購入することに関心を示していることも明らかになっています。 GUはこうした流れを受け、ジェンダーレスファッションを積極的に取り入れることで多様性と包括性を促進してZ世代へのリーチを拡大するほか、姉妹ブランドであるユニクロとの差別化を図り、よりトレンドにフォーカスし、若い消費者にアピールする戦略を取っていることが分かります。