「何もせず給料が上がっていくことはない」サイボウズ社長が語った、給料が上がる人
経営者の市場価値とは
朱野 突っ込んだ質問になりますが、経営者同士でいわゆる「市場価値」みたいなものを考えたり比べ合ったりするんでしょうか。 青野 実は僕、自分の市場価値を知りたくなって、転職エージェントに依頼して「僕が転職するとしたら、給料はいくら?」って聞いたことがあるんです。 朱野 そうなんですか! 青野 結論から言うと、ピンキリでした。会社が潰れそうで誰も経営したくないような所の給料は高かった。サイボウズみたいに誰がやっても成長していくだろう、みたいな会社の経営はみんなやりたがるので安くなります、と言われて「あ、やばい、自分の給料下げなあかん!」と。 朱野 感覚的には逆に思えますよね。 青野 儲かっている会社の方が給料は高い気がするけれど、需給で考えると逆だというのは気づきでしたが、結局答えはよくわかりませんでした。 経営者たちがみんな思考の転換を迫られているのは確かです。昔と違って今は新卒が3年で3割辞めていく。「あの会社は給与交渉もできるし、副業もできるみたいだ。転職しよう」となってみんなサイボウズに来てしまうと、会社が成り立たない(笑)。だから経営者はマインドチェンジを迫られる。 長時間労働で稼ぐ時代が終わるわけですから、短時間でアイデアを生かして儲けるような形への「ビジネスモデルの転換」が必要です。日本の産業構造の転換が強いられるわけです。 朱野 円安になっている今、自分たちの認識以上に日本は「安い」国になっていますよね。海外から見たら物の値段も安いが、給与も安い。私の子供たちも、もしかしたら海外に出稼ぎに行くんじゃないかという予感があります。 青野 あと数十年間で日本が全体的に沈没していくのはまず間違いない。でも、その過程でも新しいチャンスをものにできる人が21世紀後半のリーダーになっていくんでしょうね。経営者も社員も、新しいことを学ばないと古い人間になってしまう。「最終学歴」にこだわる日本人、多いですけれど、「最新学習歴」に変えてしまいたい。「あなたは何を最近学びましたか?」と聞かれて答えられる人間、そうやって学び続けられる人間がこれからの価値の高い人間だと思います。 朱野 楽な時代とはとてもいえないですし、新しいことを今から学ぶのも正直つらいですが、未知の世界にあえて自分を置いて、再び成長していく楽しさってありますよね。 青野 それがわかっている人は素敵な人だと思います。働き方改革、賃上げと来て、『わた定4』のテーマは「学びの変化」だったりして。 [文]新潮社 協力:新潮社 新潮社 波 Book Bang編集部 新潮社
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