「何もせず給料が上がっていくことはない」サイボウズ社長が語った、給料が上がる人
給料ってどう決める?
朱野 サイボウズさんは給料の決め方の三つの軸として「(1)自分が希望する給料」「(2)自分の市場価値」「(3)チームへの貢献」というのを上げられていますが、そのどれとも向き合うのはきついのではと感じます。 青野 自分の市場価値に向き合うのは勇気がいりますよね。資本主義で考えると、給与とはシンプルに「人の価値」ですが、これが市場で決まってしまう。うちで給与交渉した人は、まず転職サイトで他社だとこれぐらいの給料がもらえますよ、と主張してくれた。すると、こちらは給料を適正な市場価格に近づけることができる。でもその結果、現状よりも低い給料を突きつけられる可能性もあります。 朱野 話がずれるかもしれませんが、出版業界では「本を定価で買わないのは、あなたの本に『価値がない』と突きつけることだから、中古で買ったとか図書館で読んだとか作家に言っちゃいけない」なんて言説があります。良かれと思って言っているのはわかるのですが、資本主義的価値観に囚われすぎだと私は感じます。そのような言説を聞き続けていると、市場価値がつかなければ自分は無価値だと過剰に捉えるようになるのではないかと。 青野 そんな結果を見ると、誰だって動揺します。でも、それは単純に、そういう価値をつけた人がいた、っていうだけの話でしかないんです。 朱野 人によって簡単に変わってしまうような評価を自分自身の価値だと捉えない方がいいということでしょうか。 青野 そうですね。自分の幸福が失われてしまうことの方が非常にもったいない。少し冷めた目で「なるほどね」と受け止めるぐらいのメンタルの強さがこれからの時代には必要になってくると思います。これだけ社会の多様化が進んでいくと、残念ながらみんなの給料が何もせず上がっていくなんてことはない。平均もよくわからないから、結局自分の価値は自分の中で決めないといけない。 朱野 「(3)チームへの貢献」について、本当にチームの役に立てているのかって、これも自分で決められるものなのでしょうか。 青野 きちんと計るのは難しいように思えますが、最終的に得てほしいのは「その職場で楽しく働けている」という実感です。自分が貢献できているという実感を自分で持てることが重要で、そこに向き合うことで人の心が鍛えられて思考が自立できると思います。 朱野 会社で役に立っているのか、何のためにここにいるのか。そういうことを本人がつかむきっかけとして、給与交渉があると考えられるわけですね。