Xマスに夫を奪われ12年「消えない苦しみ受け入れて」 東広島市の鉄板落下 遺族の松本さん、事故後初めてツリー飾り付け
広島県東広島市で2012年にトレーラーから鉄板が落下し、2人が死亡した事故は25日で12年になる。夫の松本康志さん=当時(45)=を亡くした里奈さん(53)=広島県府中町=は今年、事故以来初めて自宅にクリスマスツリーを飾った。「心の傷は一生癒えないけど、楽しんで生きていくのもいいなと思えるようになった」と時を経て変化した胸中を語る。 【写真】鉄板に押しつぶされた乗用車の中から、けが人を救出する消防隊員たち=画像の一部を修整しています(2012年12月25日午後0時40分) 仏壇の前に、高さ50センチほどのツリーが立つ。12月上旬、広島市の花店であったワークショップで長女と一緒に作ったものだ。「ツリーを飾るなんてわが家にとっては大事件」だと言う。 康志さんが亡くなった翌年の1月、家のツリーを捨てた。「世間にとってクリスマスは楽しいパーティーなんだろうけど、わが家にとっては命日」。生きて日常を楽しむことができない最愛の夫を思い、気持ちは押さえて過ごしてきた。 年月がたち、そんな心境が変化した。飾りつけたツリーは少し前向きになった気持ちの表れでもある。「子どもがパートナーや家庭を持ったときを考えると、さみしいでしょ」。当時、高校生だった2人の子どもは社会人に。節分で鬼になりきるなど季節の行事を大切にしていた康志さんとの思い出も頭にあった。「主人には『なんで今まで飾ってなかったん』と言われそう」 でも、悲しみが癒えたわけではない。県内外の運送会社や学校での講演で事故のことを話すと涙が出る。今年もクリスマスが近づくと「12年前のこの時はまだいたんだな。本人も亡くなるなんて思わなかっただろうな」と心が痛む。 「苦しさは一生消えない。その事実を受け入れることで少し楽になった」と里奈さん。12月中旬にあった康志さんの13回忌の法要では初めて涙が流れず、お経を聞きながら12年間を振り返れたという。家族みんな、よくここまで頑張ってこれたな、と。
中国新聞社