国家間対立が深刻な「COP」、どうなる気候変動対策…トランプ2.0で米国の排出量急増も
アゼルバイジャンの首都バクーでことし11月、国連の気候変動会議(COP29)が開かれました。会議では、先進国から途上国への資金支援を2035年までに少なくとも年3000億ドル(約45兆円)と、これまでの3倍に引き上げることが決まりました。世界各国は異常気象による影響を毎年のように受け、気候変動対策は急を要する課題となっていますが、会議では国同士の対立が目立ったのが現実です。気候変動対策は今後、どうなっていくのでしょうか。やさしく解説します。 【写真】国土の15%が水浸しの南スーダン、洪水被害は深刻に (西村卓也:フリーランス記者、フロントラインプレス) ■ そもそも「COP」とは? この会議は正式には「国連気候変動枠組み条約・第29回締約国会議」といいます。海外では、United Nations Framework Convention on Climate Change(国連気候変動枠組み条約)の略称である「UNFCCC」を用いてUNFCCC Conferenceと称したり、国際条約の締約国会議を意味するConference of the Partiesの略称「COP」と会議の回数を組み合わせ、「COP29」と称したりします。 国際条約に関する締約国会議は、あらゆるテーマで頻繁に行われていますが、気候変動対策は地球全体の最重要課題でもあることから、「COP」と言えば、国連気候変動枠組み条約に基づく締約国会議のことを指すケースが多くなってきました。 この条約は1994年に発効し、1995年から新型コロナの影響で不開催となった2020年を除いて毎年世界各地で開かれています。2024年は29回目で、毎回、各国の代表が地球温暖化による悪影響を防止するための策を話し合っています。 ことし11月11~24日に開かれたCOP29では、何が焦点になったのでしょうか。最大のポイントは「気候資金」でした。
■ 途上国の厳しい現実、南スーダンでは国土の15%が年中水浸し 2009年にデンマークのコペンハーゲンで開かれたCOP15において、先進国から途上国に対し年1000億ドル(約15兆円)を提供する目標を2020年までに達成することに合意していました。しかし、実際に目標額に達したのは2年遅れの2022年。先進国からの資金がなかなか集まらなかったのです。 途上国側はCOP29で、年1.3兆ドル(約195兆円)が必要だと主張していました。しかし、11月22日までだった会期を延長して交渉を重ねた結果、3000億ドルに収まったのです。途上国には不満が残りました。インド代表団の1人は、合意文書に対し「これは幻覚に過ぎない」と不信を訴えたことが世界中に報道されました。 途上国側の主張は強硬に見えるかもしれませんが、背景には厳しい現実があります。 例えば、アフリカの南スーダン。ここ数年続いた大雨で洪水が頻発し、国土の約15%が1年中水に浸かったままで、住民は移転を余儀なくされています。食料不足も深刻ですが、南スーダンは2011年に独立したばかりで政治が安定せず、気候変動対策に手が回らない状況です。 海に浮かぶ島国では、温暖化による海面上昇の脅威にさらされています。海面上昇は今後数百年続き、2300年には最大で7メートル上昇するとの予測もあります。 1000以上の島からなるインド洋上の国家モルディブでは、2050年までに国土の80%が人の住めない土地になると懸念されています。住民生活に欠かせない電力はディーゼル発電に頼っており、太陽光など自然エネルギーへの転換を目指しても、コスト上昇で計画が頓挫する状態です。 こうした事態を抑制するためには、途上国への資金援助が欠かせません。気候資金は温室効果ガス排出削減などの「緩和策」、および、災害に備えるインフラ整備などの「適応策」に使う目的です。先進国も財政難などの問題を抱えていますが、途上国の気候変動対策を後押ししなければ、世界全体の気候変動対策が前に進まなくなるのです。