「家族はできたけど、僕は上島さんも亡くしちゃってるから」後輩芸人に誕生日を祝われるタイプではないが…有吉弘行(50)が“絶望”の中で出会った仲間
亡くなった上島竜兵への強い思い
有吉の心のなかには常に絶望と諦観がある。それでも、彼の「情熱」は消えなかったに違いない。有吉はこの翌年、『内P』の精神を受け継いだような番組である『有吉の壁』(日本テレビ)を立ち上げる。そして、数回の特番を経て2020年4月から、まさかのゴールデンタイムでのレギュラー化を果たしたのだ。同じ2020年、『タレント名鑑』のエッセンスも感じさせる『有吉クイズ』(テレビ朝日)も生まれ、翌年にはレギュラー化した。2022年には全曜日でゴールデン・プライムタイムの冠番組を持つ快挙(しかもNHKと民放キー局すべて)を達成した。 そしてこの年、『NHK紅白歌合戦』に“初出場”。純烈×ダチョウ倶楽部のコラボに有吉も参加し、「白い雲のように」を歌った。その年の5月、不遇の時代を支えてくれていた恩人であり、「親友なような感じもするし尊敬する先輩だとも思ってる」(『アメトーーク!』2021年8月19日)と語っていた上島竜兵が亡くなっていた。その弔いの意もある歌唱だったのだろう。歌い終えた有吉は「上島も喜んでおります」と微笑んだ。 『10年観察』でとりわけ印象的だったのは、他の2人が誕生日に毎年のように後輩芸人たちを集めてホームパーティを開いていたのに対し、有吉だけはいつも特別なことをせずにすごしていたことだ。この番組でも、そんな自らの10年間のVTRを見て「家族はできたけど、仲間が少ないなって。僕は上島さんも亡くしちゃってるから……」とつぶやき、上島への思いの強さをにじませていた。 翌2023年、ついに有吉は司会者として『紅白歌合戦』に出演した。 有吉は『紅白』を数日後に控えた日に『有吉クイズ』でゲームセンターを訪れ、メダルゲームに興じながら、こんなふうに語っていた。 「この番組でウナギ獲ってるのと『紅白』の司会が終わった時の達成感って変わんないんですよね。小さいウナギしか獲れなかったなあ(※1)ってのと『紅白』の大事な場面で嚙んじゃったなっていう後悔の仕方、たぶん一緒だと思うんですよね。欲が無いわけじゃないんですけど欲深くはないのかもしれないですね。あんまり大きな差異がないというかねえ。緊張感も変わらないですよ。レスリー(・キー)さんのカレンダー(※2)そろそろ迫ってきたなっていうのと『紅白』が迫ってきたなという緊張感は」「『紅白』の司会大変だなぁ、うまくできるかなぁっていう緊張感よりは、打ち上げあるのかな、打ち上げで挨拶しなきゃいけないのかなっていう、そっちの苦手感、苦手のほうが先に立っちゃうんですよねぇ」 果たして、『紅白』で有吉はいつも以上に緊張していたように見えた。 番組後半、有吉は当時っぽい衣装を着て、藤井フミヤとともに再び「白い雲のように」を歌った。 歌い終わり、一旦ステージから捌けて戻ってくると、まさかの着替えに失敗。「緊張で焦っちゃって裸足で来ちゃった」「記憶が飛んじゃって」と、慌てて裸足で登場したのだ。 「フミヤさんと歌い終わって緊張の糸が切れたというか真っ白になっちゃって、はぁーって勝手に着替えちゃってた」(『NHK紅白歌合戦お正月スペシャル』2024年1月2日)と振り返っていた。