大の里ヒヤヒヤ大関初陣白星「初日の入り方課題」観戦父は「大関」場内アナウンスに「ウルッと」
<大相撲九州場所>◇初日◇10日◇福岡国際センター 先場所2度目の優勝を果たした大の里(24=二所ノ関)が、大関初陣を白星で飾った。西前頭筆頭の平戸海に攻め込まれながらも、突き落としで逆転した。薄氷の白星発進は、先場所と同様の展開。今後の巻き返しを予感させた。史上初の「ちょんまげ大関」が年間最多勝、さらには06年夏場所の白鵬以来、18年ぶりの新大関優勝に挑む。西前頭16枚目の尊富士(25=伊勢ケ浜)は、110年ぶりの新入幕優勝を決めた春場所千秋楽以来、231日ぶりの幕内土俵を白星で飾った。 ◇ ◇ ◇ 負けパターンだった。それでも負けなかった。大の里が大関の底力、看板力士の意地を見せつけた。立ち遅れて平戸海にもろ差しを許すと、ズルズルと後退。それでも懐の深さを生かして体を開き、左で相手の肩口に上から体重をかけて突き落とした。「先場所も初日にヒヤヒヤしたけど、今場所もそういう相撲になってしまった。初日の入り方が課題」と反省しきり。取組後、土俵下の控えに戻ると、すぐ隣には勝負審判で師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)。課題山積の内容に再びヒヤリとした。 先場所初日も、熱海富士に土俵際まで押し込まれながら、逆転のはたき込みで白星発進していた。取組後の猛省も2場所連続だったが、先場所は2日目から内容で盛り返し、無傷の11連勝を飾っていた。今場所は新大関で迎え、重圧が増してもおかしくない状況。この日、会場で観戦した父の中村知幸さん(48)も「大関」の場内アナウンスには「巡業では聞いたけど、本場所で聞いたらウルッときた」というほど。特別な感情が湧いても不思議はなかった。ご当所長崎県出身の相手以上の大声援も「特には」と気にならず、冷静さが逆転白星に導いた。 初日に負けてズルズルと2連敗、今年唯一、2桁白星に届かず9勝止まりだった7月の名古屋場所とは違う。内容が悪くても、勝ちきるだけの引き出しが増えた。先場所前も、今場所前も、師匠から課題に気付かされるように繰り返した三番稽古で地力をつけた。先場所優勝後、10月の秋巡業はアデノウイルス感染による発熱などで離脱。場所前には「不安要素もあったけど、身になった稽古ができた」と話していた。それでも自然と体が動いて白星発進。先場所に続く吉兆だ。 新入幕の初場所から今年5場所で挙げた56勝はトップ。2位で52勝の大関琴桜を4差リードし、年間最多勝に一段と近づいた。「まずは1日1番に集中」。この日の取組後に、10回近く使っていた「集中」の課題を克服すれば、18年ぶりの新大関優勝も見えてくる。【高田文太】