「広島環状化」に動き出したアストラムライン 人口減ワースト2、都市の価値向上は不透明
市は「採算は確保できる」と強調するが、営業利益も従来計画比7割減の2千万円の見通しだ。
一方、資材や労務費の高騰を受け、事業費は約760億円で3割以上増加。総務省が公表した今年1月1日現在の住民基本台帳に基づく人口動態調査によると、広島市の「転出超過」は神戸市に次ぐ全国ワースト2位。沿線人口の減少や高齢化に歯止めがかからない。
都市戦略に詳しい広島修道大の三浦浩之教授は「公共交通の延伸は住民らの利便性アップに意義がある」としつつ、「それ以外の価値付けが問われる」と指摘。「新線開業でエリア全体(西風新都)の価値を高めなければ延伸効果は限定的となるが、そのための戦略・計画が現状では見えていない。市やエリアに関わる企業などは、エリアの将来像を明確に打ち出し、価値向上のための具体策を示すべきだ」と述べた。(矢田幸己)
◇アストラムライン 昭和40年代からの宅地開発による人口の急増に伴う交通問題の解消のために建設され、平成6年に開業した。広島市の第3セクター「広島高速交通」が運営し、令和4年度には1日平均5万9086人が利用。名称は日本語の「明日」に英語の「トラム」(電車)を組み合わせ、路線を意味する「ライン」を加えた。