「広島環状化」に動き出したアストラムライン 人口減ワースト2、都市の価値向上は不透明
広島市内中心部と市北西部の郊外を結ぶ新交通システム「アストラムライン」の延伸計画原案を市が取りまとめ、今月公表した。広域公園前(同市安佐南区)からJR西広島駅(同市西区)までの約7・1キロを伸ばして「環状化」する。地域を支えるヒトやモノの好循環を生み出すとされ、市は令和18年度ごろの開業を目指すが、人口減少が止まらない地方都市。識者からは「エリアの価値を高める戦略が見えない」との声も上がる。 【写真】高架の軌道を走るアストラムライン ■利用価値高まる 《つなげよう!!己斐の未来とアストラムライン》 西広島駅を有する同市西区己斐地区には、こう大書された横断幕が街中に掲げられている。同駅舎は令和4年に改装されたが、駅前はシャッター商店街が依然目立つ。にぎわいづくりに、延伸が持つ意味は少なくない。 太田川下流域の河口デルタ(三角州)に成立した市内中心部。そこから北西約5~10キロの丘陵地には、ニュータウン「西風新都」(同市佐伯区、安佐南区)が広がる。このデルタ-西風新都間の循環は「西の玄関口」として西広島駅のポテンシャルを高めるとされる。 松井一実市長は「軌道系として西広島駅までつながり、利用価値は高まる」と意義を強調する。 アストラムラインは現在、本通(同市中区)―広域公園前間を運行している。計画原案では、終点の広域公園前から西広島駅までを「西風新都線」として単線で延伸。五月が丘1▽五月が丘2▽石内東▽己斐上▽己斐中▽西広島(いずれも仮称)の6駅を新設する。一部がトンネル構造で、ほぼ高架部を走る。 ■期待大きいが… 整備効果に対する期待は大きい。広島市外や山口・岩国方面へのアクセス向上が見込め、移動時間が短縮する。五月が丘地区から西広島駅を例に取れば、路線バスを使う現行ルートなら所要時間は38分だが、アストラムラインでは25分短縮し、13分に。定時制も高い。 用地取得を経て令和11年度から着工し、開業は18年度ごろ。事業化を決定した平成27年当初は40年代初頭(令和10年代前半)の全面開業を掲げていたが、新型コロナウイルス禍で遅れが生じた。 軌道修正を迫られたのはスケジュールだけではない。需要予測として、平成27年当時は延伸区間で1日平均1万5200人の利用を見込んだが、運行速度を下げ、所要時間が若干延びるなどしたため、9100人と下方修正を余儀なくされた。