「全部、私の責任だから」母親はなぜ子どもたちを置いて家を出たのか 拘置所で語った6度の結婚と家族への思い【大津女児虐待死事件(中)】
2021年夏、大津市内の公園で小学1年の女児(6)の遺体が見つかった。当初はジャングルジムからの転落事故とみられていたが、滋賀県警の捜査で兄(当時17)から暴行を受け、外傷性ショックで死亡したことが判明する。 【写真】6歳妹の命を奪った兄 ネグレクトされた異父兄妹と母の3ショット
同居の母親(43)は長期間、家を不在にしていたため子どもたちはネグレクト状態に置かれ、傷害致死容疑で逮捕された兄は「妹の世話をするのがつらかった」と供述した。生後まもなく児童養護施設に預けられた女児は、亡くなるわずか4カ月前に家庭に引き取られたばかりだった。 母親はなぜ女児の引き取りを希望しながら、養育を放棄したのか。本当に兄による暴行に気が付かなかったのか。この事件を取材していた記者は、別件で逮捕、起訴された母親に話を聞くため、彼女が勾留されている拘置施設で面会を申し込んだ。(共同通信=山本大樹、吉田有美香、小林磨由子) 【大津女児虐待死事件(上)】https://nordot.app/1064356411188084755?c=39546741839462401 ▽「親バカだけど…」面会室に現れた母親の素顔 滋賀県内にある拘置施設の面会室に現れた女性は、長い髪を無造作に束ね、暗い色のTシャツとジャージーを身につけていた。椅子に着くまでは伏し目がちな姿勢をしていたが、私(吉田)と目が合うと、ぱっと愛想の良い笑顔に変わる。「手紙をくれた、子育て中の記者さんよね? 私も会ってみたかったのよ」。からりとした彼女の声は、コンクリートで囲まれた狭い室内によく響いた。
兄妹の母親と初めて面会したのは、2022年10月31日。彼女は当時、違法薬物を自宅で所持、使用したとして、麻薬取締法違反などの罪で起訴され、一審の大津地裁で刑事裁判を受けていた(同年12月に有罪判決を受け、現在控訴中)。 逮捕のきっかけとなったのは女児の傷害致死事件だ。滋賀県警は兄妹と母親が住んでいた自宅などを家宅捜索した際に、大麻や大量の注射器を押収。母親が任意提出した尿から違法薬物が検出されたことが決め手になった。 しかし、母親は「注射器も薬物も自分のものではない」「提出した尿は、事前に採取した息子のものだった」と供述し、捜査段階から一貫して無罪を主張した。公判では検察官に色をなして反論することもあったが、面会室で見せた表情はまるで別人だった。 「親バカだけど、長男(逮捕された兄)は本当に優しい子なのよ」 「あの子、ガードマンのバイトをしてたことがあるんやけど、大荷物を抱えたおばあちゃんが道を渡ろうとしてたから、代わりに荷物を持ってあげたんやって。そんな優しい子おる?」