<挑む・’24センバツ>東北出場チーム紹介/下 学法石川 仲間と勝利を信じ抜く 昨夏の敗戦 意識変わる /宮城
33年ぶり4回目となるセンバツへの切符を手にした学法石川。福島県石川町の室内練習場には、選手たちを見守るように置かれたホワイトボードがある。第96回選抜高校野球大会の選考委員会が開かれた1月26日、そこに書かれていた言葉は「Believe(ビリーブ)」。部員の心を一つにするチームスローガンの背景には、成長を誓うことになった忘れられない一戦がある。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 「これでも勝てないのか……」。県内で最大のライバル・聖光学院と対戦した昨夏の福島大会決勝。10―10で迎えたタイブレーク延長十回1死満塁、サヨナラとなる相手打者の犠飛が右翼に上がり、悲鳴に似たどよめきでスタンドが揺れた。 学法石川は先制して六回表までリード。逆転を許したものの、同点に追いつき、タイブレークでも4点を奪ったが、最後の勝負どころで逆転され無念の敗戦。試合後、涙をこぼす選手たちの中で前主将の本郷翔大(しょうた)(3年)は「今日のために準備してきたが、勝てなかった。あとは新チームに託したい」と前を向いた。 「ビリーブ」は英語で「信じる」を意味し、決勝前のミーティングで、佐々木順一朗監督(64)が試合のテーマとして掲げた言葉だった。仲間を信じること、勝利を信じ抜くこと。だが、思いを背負って力を尽くしたチームは、あと一歩で及ばなかった。 新チームで本郷から主将を受け継いだ小宅(おやけ)善叶(よしと)(2年)は、先輩たちの姿に「これでも勝てないのかという思い。今以上に取り組まないと、甲子園は見えてこない」と奮い立った。 敗戦の翌日、発足した新チームは夏の決勝戦と同じ「ビリーブ」をスローガンに受け継ぎ、「どこまでも挑戦者」の言葉とともにホワイトボードに書き込んだ。 岸波璃空(りく)(2年)は「あの試合を通じて一球の怖さと大切さを学んだ。チームの意識が変わった」と振り返る。福尾遥真(はるま)(2年)は「あの敗戦があって、戦い抜いた先輩たちがいたから今がある」と力を込める。【竹田直人、岩間理記】