1983年~1994年に発売された合計8機種のG-SHOCKの公式レストアサービスを開始
樹脂パーツ自体の再生産効率は光成形に比べれば上がりましたが、レストアサービス自体は基本的に技術者が手作業で行なっているため、一定の作業ペースが作りにくい。しかも大切なお客様の想いが詰まったG-SHOCKですから、レストア作業にはとても気を使います。本音をお伝えすると、交換パーツがある時計をリペアするのとはまた違った緊張感がありますよね。レストアサービスの時計は樹脂パーツと電池こそ新品交換ですが、それ以外の部分は届いた個体でお返ししなければならないわけですから。
–今回はレストア作業のデモンストレーションを見せていただけるんですよね? 多田さん:はい。では、さっそく取り掛かりましょうか。実際の作業は、まず樹脂カバーからメタルケースを取り出すところから始めます。さらにモジュールを取り出し、ケースに残ったボタンの動作を確認。この個体はボタンシャフトがやや曲がっているので手作業で微調整していきます。この作業も個体によっては金属疲労などで折れてしまう可能性が非常に高いので、極めて慎重に行います。 松崎さん:ボタンシャフトは一体成形になっているので折れたらアウト。しかも交換パーツのストックもない状況です。 多田さん:しかも長年使われたボタンシャフトはさすがに経年変化が起こりやすいですね。カバーを外すときに少なからず干渉しますし、なにより人によって押す方向のクセがありますから曲がっていることも多いです。ちなみにこのシャフトには極小の2重パッキンがあり、こうした極小部品もG-SHOCKの性能維持に欠かせません。このように目視と触感でひと通りの外装の調整を終えたらモジュールをメタルケースに戻して、新しい電池に入れ替えます。 松崎さん:今回はケースバックを開けた状態でご用意しましたが、お送りいただく個体の中には錆びなどで完全にケースと固着してしまった個体も届きます。そうした、どうしてもレストアできないものについてはやむなくご返送させていただくことになります。 –先ほどのボタンシャフトもあまり攻めた調整は難しそうでしたね。他に交換できないパーツとは? 難波さん:ケースバックですね。私たちも交換パーツの新規設計を試みたのですが……。なんというか、いまの技術だと綺麗にできすぎてしまうのです。文字や図柄のデザインもかっちりしすぎてしまうというか。