「推しを語りたいのに『やばい!』しかでてこない…」推し活を充実させるコツとは?
読解力や観察力より妄想力
推しについて発信したい。この欲求の裏には、他人に知ってほしい、という願望があります。「自分だけの感情」だけなら日記にしたためればいいのですが、ブログやSNSで他人に知らしめるには、文章を工夫する必要があります。 工夫=面倒、と尻込みする人もいるかもしれません。難しく考えず、自分の感情をときほぐしていけばいいのです。 たとえば「泣ける」の代わりに、「ふるえた」という言葉を使うとしましょう。「×××を観て心がふるえた」。では、どのように心がふるえたのでしょう。 「ふるえた」という言葉から連想すると、朝露に葉が「ふるえた」とか、寒さで体が「ふるえた」など、バリエーションがあることに気づくはずです。 「スプーンでちょっとつついたゼリーがふるえるように」などでもいいのです。あなたの妄想力を総動員して、心の動きを独自に読みといていきましょう。最初は確かに面倒かもしれませんが、慣れてくれば楽しみに変わってくるはずです。
なぜ推しを言語化するのか
今の時代、推しとファンが交流できる場が増えてきました。だからこそ、言葉でも差別化をはかりたいと思いませんか。あなたの心を砕いて綴った文章は、そのままあなたを飾る個性になります。 LINEやメールなど、文面だけで相手の様子が浮かび上がってきた経験はありませんか。自然と、言葉には気持ちがあらわれるのです。 家族、友達、そして推しへ。見えないあなたの姿を言葉で表現するなら、できるだけよい印象にしたいですよね。しかも姿や名前なしに、ブログやSNSやファンレターを読んだだけで推しがあなたを特定してくれたら、それこそやばいくらいうれしくないですか。 語彙力をみがくのは、あなた自身をみがくのと同じことなのです。
「好き」を記録しておくために
「『好き』は、一時的な儚(はかな)い感情である」と本書。そんなことはない!とあなたは断言できるでしょうか。できないですよね。でもそれは「悲しいことでもなんでもなくて、そういうものなのです」。 何らかの事情で、推しが推しでなくなったとき、しばらくは食欲もなくひきこもるかもしれません。でもほとぼりが冷めれば次の推しができて、また熱狂的な日々が幕をあけます。 「好き」の気持ちが移ろいでいくから、人は悲しみから立ちなおり、生きていけるのでしょう。 ただ、「『好き』が揺らいで焼失したとしても、一度『好き』を言葉にして残しておけば、その感情は自分の中に残り続ける」と本書は言うのです。 推しもあなたの宝物ですが、推しを思うあなたの気持ちもまた唯一無二の宝物なのです。好きだった気持ちは、やがて必ずあなたを救います。 いつしか過去を振り返ったとき、あなただけの言葉で推しや好きな気持ちが語られていたとしたら、どんなにか素敵でしょうか。 ある意味、推しは自分を映す鏡なのかもしれません。あなたに、愛に満ちた世界をおしえてくれた推し。推しをとおして、自分の新たな可能性、言葉や文章の魅力を知ってみませんか。 <文/森美樹> 【森美樹】 小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx
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