バービー×小野美由紀 対談「理解も支援も足りない…。切実な妊娠・出産のモヤモヤを考える」
妊娠・出産した女性の肩身が狭すぎる現実
【モヤモヤ2】妊娠中、育休復帰後など女性が謝る回数が増えることにモヤモヤします。(匿名 年齢 職業未回答) バービー「何にも悪いことなんかしてないんだから、謝らなくていい。そう思える人が少ないってことは社会に余裕がないってことですよね」 小野「そうですね。ただ、謝らなくていいと頭ではわかっていても、産前・産後の女性の肩身が狭いというのは、実際にありますよね。そういえば私、このあと子どもを迎えに行くんですけど、こんな透けてる服で迎えに行く保護者っていないんですよ」 バービー「どうして?」 小野「こういうチャラけた服で行くと、『子どもを預けて遊んできたの?』って保育士さんや他のお母さんから思われるかもしれないから。私は気にせず、このままの格好で行きますが、地味な〝ママファッション〞に身を包まないと、居心地の悪さを感じる人もいる。インターとか認可外施設はもっと自由な感じですが」 バービー「そうか。『みんなが入りたがっている認可保育園に預かっていただいている』から、遠慮しないといけないのか。でも、母になったって遊んだっていいし、それを申し訳ないなんて思わなくていいはずなのに」 小野「職場に関しては、妊娠・出産だけじゃなくて、病気や介護のときも休むことに寛容な社会であれば、ここまで罪悪感を感じなくてよくなると思う。今の社会はバリバリ働ける人だけを求めていて無理ゲーすぎる」 バービー「本当にそう。社会構造に問題があるのかしら。母親が謝らなくていい社会をつくっていきたいですよね」
“普通”の母親像が押し付けられることのしんどさ
【モヤモヤ3】私はノンバイナリーですが、マタニティ雑誌や妊活・出産アプリなどは〝普通〞の男女カップルしか想定しておらず辟易しています。以前、妊娠したときに医者から「ママ」と呼ばれたことも。今後もあらゆる面でこうやって女であることを突きつけられ、いろんな不利益を被るのだと思うと、妊娠・出産はやめておこうかと考えてしまいます。(F 34歳 会社員) バービー「私も相談者さんのように 〝普通〞とされている母親像、家族像にすごくモヤモヤしています。今日助産師面談に行ってアンケートを記入したんですが、育児を手伝ってくれる人の欄に『夫、実親、義親』しか項目がなくて驚きました。シングルマザーや親がいない人はどうするの? ヘテロセクシュアルのカップルだけが子どもを持ち、育児のメインは女親で、男親はその手伝いという認識なの?と怒りが湧いてきて。きっと相談者さんは私以上に行政や病院との関わりの中で怒りややるせなさを感じていらっしゃるのだろうなと」 小野「私も妊娠し出産してからずっと、『子育ては女性がするもの』っていう社会通念を押し付けられている感じがして、すごく嫌。どんなジェンダー、セクシュアリティ、働き方の人にも産みやすい社会になってほしいと切実に思う。フリーランスで働いている女性も当たり前の母親像から外されている感覚があります。バービーさんはステレオタイプの母像に押し込められていると感じることはないですか」 バービー「私はそれが嫌で、必死に予防線を張ってるんですよ」 小野「どういう予防線を?」 バービー「妊娠してから、より攻撃的な服を着るようになりました。先日、攻めたスタイリングのマタニティフォトを公開したんですけど、『母親らしくしろ!』という声がほとんどなくて、「あれ? もうちょっとイケた⁉」って(笑)。これからさらに過激に行こうと思ってます」 小野「いいですね。どんどんママ像を壊していかないと変わらないですもんね。相談者さんも『自分で打ち壊していくしかない。自分が先駆けだ!』ぐらいの気持ちでいたらいいと思います。あと、モヤモヤしたらちゃんと言い返す。私は子育てを“手伝ってくれる” 人の欄に夫と書いてあるのが解せなくて、『夫は主体なので手伝いの項目に含めない』と書いて、紙を突き返しました」 バービー「本当にそのとおり!」 小野「エネルギーがいるけど、声を上げないと変わらないですから」 バービー「そういえば、助産師さんに『旦那さんは育休取られますか?」と聞かれたので、『はい、3カ月』と答えたら、『3カ月もいいわね~。だったら、家事支援サービスの説明は省略していいかしら?』と言われて、いやいや夫が育休中でも使う権利があるんだから使わせてくださいよ、と思っちゃって」 小野「信じられない。親が二人いたら支援がいらないなんて幻想だから」 バービー「妊娠後期になると、体がしんどくて頭も全然回らないのに、こういう事務手続きとか面談とかやらなきゃいけないことが多すぎる。しかも、家事支援やベビーシッター支援、その他もろもろの産後ケアサービスの窓口がそれぞれ違って、毎回違う助産師さんが出てきて同じ質問に答えないといけないし、それぞれに登録が必要ですごく大変。そこでさらに典型的な家族像にあてはめられた発言を聞いたら、精神的なストレスはもっと大きくなる」 小野「つくづく理解も支援も全然足りていないと感じます」 バービー「小野さんが妊娠中はどんなことにストレスを感じましたか」 小野「私の場合、大変だったのは保活でした。わが家は夫もフリーランスで、子どもが保育園に入れなかったら完全に詰むので、妊娠中から保活をしていたんです。探してみると、保育環境が整った認可保育園は全然空いてなくて。でも、認可外保育施設に通いながら保活を続けても、待機児童から外されるというトラップ。本当に働く女性を支援する気あるの? と思うことがいっぱいで、ストレスフルでした。こういうことが解決しないと、産みづらさは変わらない。やっぱり声を上げたり、行動を起こさないといけない。世に知らしめていかないと、世間の意識が変わることはないんだなって思います」