飲料大手5社が初の協力組織を発足 物流や食品ロス問題改善へ業界特有の商習慣にもメス
清涼飲料大手5社は21日、物流や食品ロスといった社会課題に対応するための研究会を発足したと発表した。飲料業界では2~3社が共同搬送で物流の効率化を図るなどの取り組みはあるが、5社が協力する組織の発足は初めて。連携を広げて物流のさらなる効率化を図り、厳しい賞味期限管理により食品ロスが発生するという飲食品業界に残る独特の商習慣の見直しなどにも取り組む方針だ。 【イラストで解説】日本の食品ロスの状況(令和4年度推計値) ■2024年問題、環境対応が急務 参加するのは、アサヒ飲料、伊藤園、コカ・コーラボトラーズジャパン、キリンビバレッジ、サントリー食品インターナショナルで、国内に流通する清涼飲料水の8割以上をこの5社が占める。研究会では、トラック運転手の残業規制強化により輸送力が不足する「2024年問題」の改善、温室効果ガスの排出量や食品ロスの削減に向けて、5社の各部門を横断した協力を進める。具体的な解決策などは今後、詰める予定としている。 研究会の発足発表会で、アサヒ飲料の米女(よねめ)太一社長は「こうした社会課題を解決しないと、飲料産業のサステナビリティ(持続可能性)が保たれず、産業自体の競争力や魅力がなくなってしまう」と指摘。課題解決に向け、大手5社が協力して取り組むべき必要性を強調した。 ■厳しい賞味期限などの改善策も検討 農林水産省によると、食品の物流はトラックによる輸送が97%を占めており、2024年問題と温暖化ガスの排出量に大きな影響を与えている。「それだけに、他社の商品を共同で配送するなど効率化を図れれば、これら課題の改善に大きく貢献できる」(アサヒ飲料関係者)という。 また、飲食品業界の特有の商習慣が食品ロスを発生させているとの指摘もある。例えば、賞味期限を3分割し、最初の3分の1の期限までに食品製造・卸売業者が小売業者に納品を求められる「3分の1ルール」が、欧米に比べ厳しい基準とされ、食べられる食品の大量廃棄につながると問題視される。既に納品された商品よりも賞味期限の日付が前の商品を納品(日付逆転)できない商慣習も食品ロスを発生させていると指摘され、研究会では小売業界も巻き込んだ改善策も検討する。(西村利也)