原油価格、まさかの1バレル=50ドル台はあるのか
国際原油市場が、混迷の度合いを強めている。アメリカの指標であるWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格は8月後半まで1バレル(約159リットル)=70ドル台半ばを中心として、比較的広めのレンジ内での上下を繰り返していた。 だが8月末から9月前半にかけては急速に売り圧力が強まり、一時は65ドル台まで下落、一気に値を崩した。その後はハリケーンによる影響や、アメリカの予防的な利下げで景気悪化リスクがやや減少したなどの見通しから、再び70ドル台を回復する場面もあるなど、やや方向感のない展開となっている。
しかも、ここへ来て、9月28日にイスラエル軍がレバノンの首都ベイルートにある、イスラム教シーア派のヒズボラ本部を空爆。これによって最高指導者であるナスララ師が死亡。中東情勢は再び緊張する懸念が高まっている。 ■米国株式市場は楽観的だが、景気が軟着陸するかは不明 9月に入って原油先物価格が下落した背景には、世界的な景気減速やそれに伴う需要の伸び悩みに対する懸念があったのは間違いない。中でも世界首位と2位の消費国であるアメリカや中国の景気先行き不透明感が強まったことが大きかった。
まずアメリカでは9月6日に発表された8月の雇用統計で非農業雇用数の伸びが前月比14.2万人増と、前月に続いて予想を下回る弱気の内容となったことが大きい。 原油市場とは裏腹に、株式市場では、インフレの沈静化に自信を深めたFRB(連邦準備制度理事会)が今後も積極的に利下げを進めるという楽観的な見方を支えに、NYダウ30種平均株価やS&P500種指数が史上最高値を更新。一部は投機的な買いが集まっている。だが、アメリカの景気がこの先しっかりとした回復基調を取り戻すという見方が強まっているわけではない。
一方、中国経済の見通しについては、さらに深刻だ。9月14日に発表された同国の8月の工業生産は前年比4.5%の増加と、予想を下回る伸びにとどまった。生産の伸びは4カ月連続で前月を下回っており、これは2021年以来の長さだ。同時に発表された8月の小売売上高も、前年比で2.1%と前月から伸びが鈍化、市場予想も大きく下回った。 国際エネルギー機関(IEA)は9月12日に発表した月報で、2024年の世界石油需要の伸びを、前年比で日量90.3万バレルと推定。従来の97.0万バレルから下方修正した。また、2024年上半期実績(需要の伸び)は日量80万バレルと、前年同期の約3分の1にとどまったという。IEAはこうした需要低迷には、中国の景気減速が背景にあると指摘。EV(電気自動車)の普及が極めて速いペースで進んでいることも大きいとしている。