【全文】BBC日本語版開設(中)「ソーシャルがニュースの編成に影響力」
ニュースの「境界線」が変化している(藤村)
加藤:田端さんがおっしゃったように、結局は同じことを、似たようなことを言ってるのだなという気が、伺っていてしました。ただ、権威にひれ伏すとかそういうことをもうしなくなっている視聴者、読者に対して、権威付けられてきた媒体がこれからどう変化していくか、みたいな話に。それはたぶん次の話になるのかなと思っているんですけども、藤村さんのキーワードが、境界線が変化ということで、ちょっと関わってくるのか、今のお話に。 藤村:はい。たぶん似てるところがあると思うんですけれども、僕は、ニュースっていう定義が変化しようとしている。僕はあえてここにいらっしゃってる、取材に来られている方々と一緒に考えたい、言いたいなと思うのは、それはシュリンクしてるんではなくて、広がろうとしているんだと思うんですね。SmartNewsはもう本当に多様な媒体社さんの多様なコンテンツを表示し続けてるんですけれども、その領域、種類はどんどん増えてきていて、カテゴリーも増えてきてると思っています。 かつて、例えばそれこそ恋愛の話とか、星占いとか、あるいはファッションの話って、ニュースっていう定義には入ってこないものだったと思うんですけれども、これをニュースだよねっていうふうに届けると、まさに旬の、新しい情報としてそれを積極的に読んでくれる、見てくれるっていう方々が膨大にいらっしゃるという事実にも突き当たっています。 逆にこれは本当に、時々チャレンジしてみるんですけれども、さまざまな種類の生活を過ごされている方に、ニュース必要ですよねって言うと、ここにいる皆さんはみんな答えとしてニュース、必要っていうふうに、イエスっていうふうに答えるだろうと期待するじゃないですか。でも、別にって言われることが多いんですよ。ところが、先ほど申し上げたように、占いであったり面白い食べ物の話であったりというコンテンツを差し出すと、喜んでそれを摂取してくれるというのもわれわれ見ている現実なので、このニュースっていう考え方、ニュースのアウトライン、ニュースの輪郭というもの自体が大きく変わる、僕は広がっていくっていう時期だと思っていて、それを積極的にチャンスと考える見方はあっていいのかなと、そういうふうに思っています。 加藤:今のお話を、しつこいようですが、おすしの話に戻しますと、SmartNewsさんのような影響力というか、みんなが好きな媒体が星占いも恋愛もファッションも、これニュースなんだよって言うことでニュースになっていく。それはある意味で、すし屋のすごいかっこいい大将が、これはおいしいぜっていうことで、あ、おいしいんだってみんなが思う、そこに1つの新たなブランディングというか、悪く言えば権威ですよね。そういうことにならないようにする工夫とかいうのはあるんですか。 藤村:僕、こういうふうに思うんですね。例えば新聞だったらページを、新聞の紙面をだーっとめくっていく。テレビだったら、今はそういうふうにザッピングと言わないかもしれないんですけど、チャンネルをどんどん変えていく。その中で自分の考えている、自分が追い求めているコンテンツに出会おうと消費者は行動するわけですけど、その間に逆に、いろいろなコンテンツとの出会いもあると思ってるんですね。 ですから非常にヘビーな、調査報道のような記事が好きですと答える人も、ページをめくっている間におなかがすいてたら食べ物の記事に出会って、それに足を止めるということがある。これは実は別に新しい現象でもなくて、そういうものをニュースの考え方から排除してきたような考え方をもう、改めてもいいのかなと。そういう出会いの機会とか、デバイスもそういうことにフィットしたものが出てきているので、繰り返しになりますけども、ニュースという考え方を狭くではなく広く捉えるような時期が、そこかしこで起きているのかなというふうに思ってます。